コラム
生成AIで作った文章や画像は、会社のチラシやホームページに使ってよいか|文化庁の「AIと著作権に関する考え方」と「チェックリスト&ガイダンス」で使う前に確かめる3つと、中国地方の企業の懸念18.8%
文化庁の整理では、生成AIで作った文章や画像を会社のチラシやホームページに使ってよいかは、人が自分で作ったものと同じ基準で判断されます。既存の著作物と似ていなければ(類似性がなければ)、その利用について著作権法上の特段の許諾は不要で、似ていて、かつ元の作品にもとづいて作られた(依拠性がある)と認められると、著作権侵害になります。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)が、このように整理しています。
この記事では、この2つの公的な資料をもとに、「作る」と「使う」で何が違うのか、使う前に確かめる3つ、作ったものに自社の著作権が生じるのか、を整理します。あわせて、帝国データバンク広島支店の調査から、中国地方と広島県の企業が著作権をどのくらい懸念しているかを見ます。法律の判断は書きません。個別の案件は、最後は弁護士などの専門家に確かめてください。
チラシやお知らせの文案を経営者がひとりで書き続ける代わりに、下書きをAIへ渡し、確かめる手順を会社に置く選択肢を記事の最後にまとめています →
生成AIで作ったものは、チラシやホームページに使ってよいのか
使えます。ただし、使う前に「既存の著作物と似ていないか」を確かめることが前提です。文化庁の「考え方」は、生成AIで作ったものの生成と利用について、人がAIを使わずに創作した場合の著作権侵害の要件と同じように考えるとしています。その要件は「類似性」と「依拠性」の2つで、両方がそろったときに著作権侵害となります。
| 要件 | 何を見るか | 文化庁の「考え方」の整理 |
|---|---|---|
| 類似性 | 既存の著作物の「表現上の本質的な特徴」を直接感じ取れるか | 人がAIを使わずに作ったものと同じ判断。作風や画風といったアイデアが似ているだけでは、類似性は認められない |
| 依拠性 | 既存の著作物にもとづいて作られたか | 使う人がその作品を知っていて、似たものを作らせた場合は認められる。知らなくても、そのAIがその作品を学習していた場合は、通常、依拠性があったと推認される |
チェックリストの3-1-5は、この整理を受けて、「類似性」がないAI生成物については、その利用について著作権法上、特段の許諾を得ることは不要と書いています。だから、使う前にまず確かめるのは「似ていないか」です。確かめ方として、文章検索や画像検索の活用が例に挙がっています。
依拠性のほうは、使う人が意識しなくても認められることがあります。「考え方」は、使う人がその作品を知らなくても、AIの開発・学習段階でその作品を学習していた場合は、客観的にアクセスがあったとして、通常、依拠性が推認されるとしています。似たものができてしまったときに「知らなかった」だけでは足りない、という整理です。だからこそ、似ていないかの確認が先に来ます。
「作るだけ」と「配る・載せる」で、何が違うのか
チェックリストの3-1-4は、生成そのものと、生成物の利用とでは、著作権侵害の判断が異なり得ると注意しています。社内で試しに作ってみることと、チラシに刷って配ることやホームページに載せることは、別の場面です。
| 場面 | チェックリストの整理 |
|---|---|
| 個人が私的に使う目的で生成する | 著作権法第30条第1項の範囲内であれば、許諾なく適法に行える |
| 会社の中で、許諾を得て使うことを前提に、検討の過程で生成する | 著作権法第30条の3の範囲内であれば、許諾なく適法に行える |
| 生成したものを利用する(インターネットでの配信、複製物の譲渡など) | 権利制限規定の範囲外となる場合が多い。利用の前に、著作権侵害を生じさせないか確認が必要 |
チラシの配布とホームページへの掲載は、3行目の「利用」にあたります。試作の段階では問題にならなかったものが、配った時点で問題になり得る、という順番です。「社内で何度か作ってみた。問題なかった」は、配ってよい理由にはなりません。
もう1つ、指示(プロンプト)の側にも注意があります。チェックリストの3-1-3は、既存の著作物をそのまま指示として入力する場合(既存の画像を入力して画像を作らせる場合など)について、「入力した既存の著作物と似た生成物を作らせる」目的であれば、権利者の許諾が必要になる場合があるとしています。他社のチラシを読み込ませて「これと同じようなものを」と頼む使い方は、この注意にあたります。
使う前に確かめる3つは何か
チェックリストの「AI利用者(業務利用者)」の項から、チラシやホームページに使う場面に直接かかわるものを3つに絞りました。番号はチェックリストの項目番号です。
| 確かめること | なぜ | 番号 |
|---|---|---|
| 1. 既存の著作物と似ていないか | 類似性がなければ、著作権法上の許諾は不要。文章検索や画像検索で確かめる | 3-1-5 |
| 2. 指示に、他人の作品そのものや、題名・キャラクター名などの固有名詞を入れていないか | 既存の著作物を知っていたことを推認させる事実になり、依拠性が認められやすくなる | 3-1-7(3-1-3も参照) |
| 3. 使ったサービスの利用規約を確かめ、指示(プロンプト)の記録を残しているか | 規約が著作権侵害のおそれがある使い方を禁じている場合がある。記録は、依拠性がないことを説明する材料になる | 3-1-1③・3-1-7 |
1つ目は、生成物を見て行う確認です。2つ目と3つ目は、作る前と作っている最中の話で、あとからさかのぼって整えることができません。「作ったあとに似ていないかを見る」だけでは、2つ目と3つ目が抜けます。
チェックリスト自身が書いているとおり、これらを全部やれば法的な責任を問われないという意味ではなく、全部やらなければ直ちに責任が生じるという意味でもありません。リスクを減らすための望ましい取り組みとして示されたものです。この記事も、その位置づけで紹介しています。
作ったチラシの文章や画像に、自社の著作権は生じるのか
生じる場合と、生じない場合があります。「考え方」は、AI生成物が著作物にあたるかは、使う人の「創作意図」と「創作的寄与」の程度で判断されるとしています。AIは法的な人格を持たないので、著作者にはなりません。著作物にあたる場合、著作者はそのAIを使って創作した人です。
判断の要素として、「考え方」は次の3つを挙げています。
| 要素 | 「考え方」の整理 |
|---|---|
| 1. 指示・入力の分量と内容 | 創作的な表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。長くても、アイデアを示すにとどまる指示は影響しない |
| 2. 生成の試行回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。生成物を確かめて指示を直しながら繰り返す場合は、著作物性が認められることも考えられる |
| 3. 複数の生成物からの選択 | 選ぶ行為だけでは影響しない |
経営者にとっての意味は、こうです。「来月のセールのチラシの文章を書いて」とだけ頼んで出てきた文章は、自社の著作物とは認められない可能性がある、ということです。認められなければ、同業他社が同じ文章を使っても、著作権で止めることはできません(「考え方」は、著作物でなくても営業上の利益を侵害するような場合には、民法上の不法行為として損害賠償が認められ得る、とも書いています)。
一方で、人がAI生成物に創作的な表現といえる加筆や修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められるとしています。会社の名前や社名のロゴ、長く使うキャッチコピーのように「自社のものとして守りたい」ものは、AIの出力をそのまま使うのではなく、人が手を入れる前提で考えるのが、この整理に沿った使い方です。
中国地方と広島県の企業は、著作権をどのくらい懸念しているのか
帝国データバンク広島支店の「中国地方・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」では、生成AIの懸念・課題として「著作権・プライバシー保護など法的規制」を挙げた企業は18.8%で、8項目のうち6番目でした。中国地方の661社に、3つまでの複数回答で尋ねた結果です。
| 順位 | 懸念・課題 | 中国地方の全体 | うち小規模企業 |
|---|---|---|---|
| 1 | 情報の正確性 | 50.2% | 49.0% |
| 2 | 生成AIを活用すべき業務の範囲 | 40.1% | 33.3% |
| 3 | 専門人材・ノウハウ不足 | 39.2% | 32.4% |
| 4 | 情報漏洩のリスク | 32.2% | 28.1% |
| 5 | トラブル時の責任所在などのルール整備 | 22.5% | 17.1% |
| 6 | 著作権・プライバシー保護など法的規制 | 18.8% | 18.6% |
| 7 | システム導入への資金不足 | 13.3% | 16.2% |
| 8 | 懸念や課題はない | 3.8% | 7.1% |
同じ調査で、広島県の企業の34.7%(236社のうち82社)が生成AIを業務で活用していると答え、活用している企業の主な業務は「文章の作成・要約・校正」が44.8%で最多でした(中国地方の221社の答え)。いちばん使われている仕事が文章の作成で、その成果物がそのまま社外に出るのがチラシやホームページです。懸念の順位は6番目ですが、使い道のほうは著作権と隣り合わせの場所にあります。調査の全体は広島県で生成AIを業務に活用している企業は34.7%にまとめています。
懸念の1位「情報の正確性」と2位「活用すべき業務の範囲」は、著作権の話とも地続きです。この記事で見た3つの確認は、「どの業務に使い、何を人が確かめるか」を先に決めておく、という同じ型でできています。
会社の手順には、どう落とすか
ここからは当サイトの考えです。チェックリストの3-1-2は、生成AIの利用に関する内部的なルールの策定を、3-1-1の④は、従業員への著作権の教育を、それぞれ望ましい取り組みとして挙げています。1〜10名の会社で、分厚い規程を作る必要はありません。社外に出すものについて、だれが・いつ・何を確かめるかを1枚に書いておけば足ります。
| いつ | だれが | 何をするか |
|---|---|---|
| 作る前 | 作る人 | 指示に、他社の作品そのもの、作品名、キャラクター名を入れない。参考にしたいものがあっても、読み込ませずに、何を伝えたいかを言葉で書く |
| 作っている間 | 作る人 | 使ったサービスと日付、指示(プロンプト)の全文、出てきたものを、決めた場所に残す |
| 配る前・載せる前 | 作る人と別の1人 | 文章は一部を文章検索に、画像は画像検索にかけて、似たものがないかを見る。見た結果も同じ場所に残す |
| 長く使うもの | 経営者 | 社名のロゴ、看板のキャッチコピーのように守りたいものは、AIの出力をたたき台にして人が手を入れる。迷ったら専門家に確かめる |
この手順そのものを、AIに手伝わせることもできます。指示と出力を所定のフォルダに残す、確認した日付と結果を1行ずつ記録に足す、といった「残す」仕事です。経営者が毎回自分で書き、自分で確かめ、自分で覚えておく形から、手順と記録が会社に残る形に変わると、チラシ1枚ごとにかかっていた確認の時間が経営者に戻ります。
この記事を読むときの注意
- この記事は法律の判断ではありません=文化庁の2つの公的な資料の内容を紹介したものです。個別の案件で使ってよいかどうかは、弁護士などの専門家に確かめてください。当サイトも判断はしません
- 資料の日付と確認日=「AIと著作権に関する考え方について」は文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月15日に取りまとめたもの、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は文化庁著作権課が2024年7月31日に公開したものです。両方とも、2026年10月13日に文化庁の「AIと著作権について」のページで公開されていることを確認しました。これより新しい整理が出ていないかは、同じページで確かめてください
- 「考え方」自身の位置づけ=「考え方」は、生成AIと著作権に関する裁判例の蓄積がない中で、現時点の考え方を整理したものです。個々の事例の判断は、個別具体的に行われると書かれています
- 扱っていないこと=肖像権、商標、不正競争防止法、個人情報、他人の名前や写真を使う場合の問題は扱っていません。著作権についても、学習段階(開発者側)の論点と、権利者の側の対抗手段は省いています
- 条文の番号=著作権法第30条第1項、第30条の3、第30条の4は、チェックリストに書かれている番号をそのまま載せています。条文の解釈には踏み込んでいません
- 調査の数字=帝国データバンク広島支店の調査は、中国地方の1,715社に尋ねて661社が答えた意識調査です(回答率38.5%・調査期間2026年3月17日〜31日)。懸念・課題と活用業務は中国地方の全体の数字で、広島県だけの数字があるのは活用状況と効果の2つの表です。レポートは転載を禁じているため、表は複製せず、数値を引用して記事用に作り直しています
- 当サイトの考え=「会社の手順には、どう落とすか」の節は、資料の内容ではなく当サイトの考えです。特定の製品やサービスの良し悪しは扱っていません
出典
- 文化庁「AIと著作権について」
- 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日・PDF)
- 文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日・PDF)
- 帝国データバンク広島支店「中国地方・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年6月5日発表)
- 広島県で生成AIを業務に活用している企業は34.7%(当サイト)
- 広島でAI導入の相談はどこへ(当サイト)
※本記事は2026年10月13日時点の公表情報にもとづいています。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
調査でいちばん使われていたのは、文章を書く仕事でした。似ていないかを確かめる、指示の記録を残す、という手順を会社の決まりにしておけば、チラシやお知らせの下書きを安心して渡せます。
任せられる仕事の一覧は支援内容にまとめています。
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