コラム
広島県でM&Aに関わる可能性がある企業は32.2%|買い手22.6%・売り手6.9%、相談先はメインバンクが63.2%(帝国データバンク広島支店の調査)と、会社の中身が分かる資料をそろえる事務の考え方
帝国データバンク広島支店の「広島県 M&Aに対する企業の意識調査」(2025年2月14日発表)によると、今後5年以内にM&Aに関わる可能性が「ある」と答えた広島県の企業は32.2%でした。内訳は、買い手になる可能性が22.6%、売り手になる可能性が6.9%、両方の可能性が2.7%です。「関わる可能性はない」は47.9%、「分からない」は19.9%でした。
この記事では、過去5年間の実績、規模別・業種別の違い、買い手と売り手が重視する項目、相談先の数字を読んだうえで、話が始まる前に会社の中にそろえておける資料を整理します。M&Aを進めるべきかどうか、仲介業者の選び方、価格の決め方は扱いません。
得意先の一覧や仕事の手順を一から作る代わりに、資料の下書きをAIへ渡す選択肢を記事の最後にまとめています →
広島県で、今後5年以内にM&Aに関わる可能性がある企業は何%か
32.2%です。有効回答261社のうち84社が「可能性がある」と答えました。全国の29.2%を3.0ポイント上回っています。
| 今後5年以内の可能性 | 広島県 | 社数 | 全国 |
|---|---|---|---|
| 関わる可能性がある(合計) | 32.2% | 84社 | 29.2% |
| うち買い手となる可能性 | 22.6% | 59社 | 17.9% |
| うち売り手となる可能性 | 6.9% | 18社 | 8.1% |
| うち買い手・売り手両方の可能性 | 2.7% | 7社 | 3.3% |
| 関わる可能性はない | 47.9% | 125社 | 50.5% |
| 分からない | 19.9% | 52社 | 20.3% |
広島県は、買い手になる可能性が全国より4.7ポイント高く、売り手になる可能性は全国より1.2ポイント低くなっています(どちらも当サイトの引き算です)。
レポートのグラフには、2019年6月の調査の数字も並んでいます。当時は「可能性がある」が30.7%、「関わらない」が36.8%、「分からない」が32.5%でした。5年半で「可能性がある」は1.5ポイントの上昇にとどまり、「分からない」が12.6ポイント下がって、「関わらない」が11.1ポイント上がっています(差は当サイトの引き算です)。関わる・関わらないの態度を決めた企業が増えた、と読めます。
過去5年間に、実際にM&Aに関わった企業はどれくらいか
14.6%(38社)です。買い手となった企業が10.0%(26社)、売り手となった企業が4.6%(12社)でした。全国の11.1%を3.5ポイント上回っています。
| 区分 | 関わった(合計) | 買い手となった | 売り手となった | 関わらなかった | 回答社数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広島県 | 14.6% | 10.0% | 4.6% | 82.0% | 261社 |
| 全国 | 11.1% | 7.6% | 3.0% | 84.4% | 10,935社 |
| 大企業 | 34.2% | 26.3% | 7.9% | 63.2% | 38社 |
| 中小企業 | 11.2% | 7.2% | 4.0% | 85.2% | 223社 |
| うち小規模企業 | 10.8% | 4.1% | 6.8% | 83.8% | 74社 |
規模が大きいほど、関わった割合が高くなります。大企業は3社に1社あまりが関わり、その多くは買い手でした。小規模企業だけは、売り手となった割合(6.8%)が買い手となった割合(4.1%)を上回っています。業種別(回答10社以上)では、小売19.2%、建設17.2%、サービス17.1%、製造14.9%の順でした。
規模や業種によって、今後の見通しはどう違うのか
「可能性がある」の合計は、中小企業32.3%、大企業31.6%で、ほとんど差がありません。違いが出るのは中身です。
| 規模 | 可能性がある(合計) | 買い手 | 売り手 | 両方 | 可能性はない | 分からない |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大企業(38社) | 31.6% | 28.9% | 2.6% | 0.0% | 39.5% | 28.9% |
| 中小企業(223社) | 32.3% | 21.5% | 7.6% | 3.1% | 49.3% | 18.4% |
| うち小規模企業(74社) | 24.3% | 13.5% | 10.8% | 0.0% | 54.1% | 21.6% |
大企業は、可能性があると答えた12社のうち11社が買い手です。小規模企業では、売り手となる可能性が10.8%(8社)あり、買い手の13.5%(10社)に近い水準でした。小さな会社ほど、売る側として話に入る場面を見込んでいることになります。
業種別(回答10社以上)の「可能性がある」は次のとおりです。
| 業種 | 可能性がある(合計) | うち買い手 | うち売り手 | 回答社数 |
|---|---|---|---|---|
| 運輸・倉庫 | 56.3% | 43.8% | 6.3% | 16社 |
| 建設 | 41.4% | 27.6% | 13.8% | 29社 |
| サービス | 39.0% | 19.5% | 12.2% | 41社 |
| 卸売 | 30.2% | 19.0% | 7.9% | 63社 |
| 小売 | 26.9% | 19.2% | 7.7% | 26社 |
| 製造 | 25.7% | 23.0% | 1.4% | 74社 |
運輸・倉庫は半数を超えましたが、回答は16社です。1社の答えで6ポイントあまり動く数字なので、順位よりも「買い手として見込む会社が多い業種」という傾きを読むのがよさそうです。売り手の可能性は、建設(13.8%)とサービス(12.2%)で1割を超えました。
買い手と売り手は、何を重視しているのか
買い手は「金額の折り合い」が83.3%、売り手は「従業員の処遇」が88.0%で、それぞれいちばん高くなりました。
| 重視する項目(複数回答) | 買い手として(66社) | 売り手として(25社) |
|---|---|---|
| 金額の折り合い | 83.3% | 72.0% |
| 財務状況 | 75.8% | 32.0% |
| 取引先の状況 | 59.1% | 48.0% |
| 従業員の処遇 | 57.6% | 88.0% |
| 事業の成長性 | 57.6% | 28.0% |
| 経営資源の状況 | 56.1% | 12.0% |
| 経営陣の意向 | 53.0% | 44.0% |
| 技術やノウハウの活用・発展 | 50.0% | 36.0% |
| 人事労務管理や賃金制度 | 27.3% | 32.0% |
| 既存の社名の存続 | 12.1% | 24.0% |
金額は、どちらの立場でも7割を超えています。差が大きいのは「財務状況」(買い手75.8%・売り手32.0%)と「従業員の処遇」(買い手57.6%・売り手88.0%)です。売る側は働いている人のその後を気にかけ、買う側は数字と取引先、技術やノウハウの中身を見ようとしている、という向きの違いが出ています。
M&Aの相談先は、どこが多いのか
「メインバンク」が63.2%(165社)でいちばん多く、「税理士事務所」が39.8%(104社)で続きます。
| 相談先(複数回答) | 割合 | 社数 |
|---|---|---|
| メインバンク | 63.2% | 165社 |
| 税理士事務所 | 39.8% | 104社 |
| M&A仲介業者 | 23.0% | 60社 |
| メインバンク以外の金融機関 | 20.7% | 54社 |
| 公認会計士事務所 | 15.7% | 41社 |
| 直接交渉 | 11.5% | 30社 |
| 公的機関 | 11.1% | 29社 |
| ファイナンシャル・アドバイザー | 9.6% | 記載なし |
| 商工会・商工会議所 | 8.0% | 記載なし |
| M&Aマッチングプラットフォーマー | 4.6% | 記載なし |
最初に話を持っていく先は、ふだんから決算書を見せている相手、ということになります。広島県の企業がどの金融機関をメインバンクにしているかは、広島県のメインバンク(広島銀行が37.00%)にまとめています。
レポートはあわせて、規制の強化について尋ねています。「規制強化の必要がある」は55.6%(145社)で半数を超え、「必要はない」は2.3%(6社)でした。全国の59.4%よりは3.8ポイント低い数字です。レポートは、悪質な仲介業者や買い手の存在が問題になっていることを背景に挙げています。規制の中身や是非は、この記事では扱いません。
話が始まる前に、会社の中にそろえておける資料は何か
ここからはレポートの外の話で、当サイトの考えです。買い手が見るのは財務状況(75.8%)、取引先の状況(59.1%)、経営資源の状況(56.1%)、技術やノウハウ(50.0%)でした。売り手がいちばん気にかけるのは従業員の処遇(88.0%)です。どちらの側に立っても、相手や相談先に渡すのは「会社の中身が分かる資料」になります。
10人未満の会社では、その中身が経営者の頭の中と、過去のメールや紙の束の中にあることが珍しくありません。メインバンクや税理士に相談した日に「得意先の一覧はありますか」「契約書はどこですか」と聞かれて、そこから作りはじめることになります。売る・買うの予定がなくても、ふだんから会社に置いておけるのは次の4つです。
- 得意先と仕入先の一覧=相手の名前、取引の内容、いつから続いているか、契約書や覚書がどこにあるか
- 働いている人の一覧=担当している仕事、勤続年数、持っている資格、給与や手当の決め方
- 仕事の手順=受注から納品・請求までの流れと、経営者がその場で決めている判断の基準
- 設備・許認可・契約の一覧=機械や車両、借りているもの、許可や登録の期限
一から書く時間が取れない、というのがいちばんの壁です。AIに下書きをさせる方法があります。過去の請求書や見積書の控えを読ませて得意先の一覧のたたき台を作らせる。経営者が「受注してから請求するまで」を口で話し、AIが足りないところを質問して手順書の形にまとめる。経営者は読んで直すだけで済み、その分の時間が経営者に戻ります。
この資料は、金融機関に借入を相談するとき、後を継ぐ人に仕事を渡すとき、新しく入った人に教えるときにも、同じものが使えます。後を継ぐ人の有無については広島県の後継者不在率に、会社をたたむ件数については広島県の休廃業・解散にまとめています。
なお、会社を売るか・買うか、だれに相談するか、いくらで折り合うかは、金融機関や税理士などの専門家と決めることです。当サイトが扱うのは、会社の中身を読める形で残しておく事務のところまでです。
この記事を読むときの注意
- 対象=広島県に本店を置く企業699社に尋ね、261社が答えた意識調査です(回答率37.3%)。調査期間は2024年12月16日から2025年1月6日。答えた企業の数字で、県内のすべての企業の実態ではありません
- 発表の時期=2025年2月14日の発表です。同じ形のアドレスで2025年10月から2026年10月10日までの平日を確かめましたが、広島県の新しい版は見つかりませんでした。別のアドレスで出ている可能性は残ります
- M&Aの範囲=レポートは、企業の買収や合併、一部の株式を売買する資本提携、後継者がいない場合の事業承継の手段、事業の一部の譲渡を含むとしています。資本の移動を伴わない業務提携は含みません
- 規模の区分=大企業・中小企業・小規模企業の分け方は、レポートに説明がありません。小規模企業は中小企業の内数です
- 回答社数が少ない区分=業種別は回答10社以上の業種だけを載せました。運輸・倉庫は16社、小売は26社、建設は29社です。売り手として重視する項目は25社の答えで、1社で4ポイント動きます
- 2019年6月調査の数字=レポートのグラフに書かれた数値を読んだものです。2019年の回答社数は、このグラフには載っていません
- 表の作り方=過去5年の表は「両者になった」(広島県0.0%・全国0.5%)と「分からない」の列を省きました。重視する項目は上位を中心に10項目だけ載せています。相談先の下位3つは、レポートの本文に社数の記載がありません
- 当サイトの計算=買い手の可能性の全国との差4.7ポイント、売り手の可能性の差1.2ポイント、2019年6月調査との差(1.5・12.6・11.1ポイント)、「1社で6ポイントあまり」「1社で4ポイント」は、レポートの数字から当サイトが計算したものです
- この記事が扱わないこと=M&Aを進めるべきかどうか、仲介業者の選び方、価格の決め方、規制の是非、税金や契約の扱いは扱っていません
- 転載について=レポートは転載を禁じているため、表は複製せず、数値を引用して記事用に作り直しています
出典
※本記事は2026年10月10日時点の公表情報にもとづいています。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
買い手が見るのは財務と取引先と技術の中身、売り手が気にかけるのは働く人のその後でした。どちらも、得意先の一覧・人の一覧・仕事の手順が紙になっていて初めて話ができます。過去の請求書や契約書から一覧のもとを集め、表にまとめ、あとから人がたどれる手順書にする仕事は、AIに渡せます。
任せられる仕事の一覧は支援内容にまとめています。
ご相談について
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