コラム
広島県でカスハラ対策がある事業所は40.5%|職場環境実態調査(令和7年度)、被害が「あった・あったと思う」は16.4%、2026年10月1日から対策は全事業主の義務に
広島県が県内の事業所に毎年たずねている職場環境実態調査で、令和7年度にカスタマーハラスメント対策が「有」と答えた事業所は40.5%でした。前年度の35.5%から5.0ポイント上がりましたが、回答した911事業所のうち542(59.5%)には、まだ対策がありません。
過去1年にカスタマーハラスメントが「あった」「あったと思う」と答えた事業所は、あわせて16.4%です。そして2026年10月1日から、カスタマーハラスメントを防ぐための措置は、業種や規模を問わずすべての事業主の義務になります。被害の実態、対策の有無、対策の中身の順に見ていきます。
義務になる措置の多くは「決めたことを文書にして、従業員に知らせる」仕事です。その文書づくりをAIに下書きさせる進め方を記事の最後にまとめています →
広島県でカスタマーハラスメントを受けた事業所はどのくらいあるか
令和7年度の調査では、過去1年間(令和6年4月〜令和7年3月)にカスタマーハラスメントが「あった」は5.5%、「あったと思う」は10.8%でした。あわせると977事業所のうち160、約6事業所に1つ(16.4%)です。
| 年度 | あった | あったと思う | あわせて | 回答した事業所 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 62(6.5%) | 83(8.7%) | 145(15.2%) | 953 |
| 令和7年度 | 54(5.5%) | 106(10.8%) | 160(16.4%) | 977 |
「あった」は1.0ポイント下がった一方で、「あったと思う」は2.1ポイント上がり、あわせた割合は前年度より1.2ポイント高くなりました。はっきり被害と言い切れないまま「あれはそうだったのでは」と感じている事業所が、1割を超えています。
県の調査でいうカスタマーハラスメントは、顧客などによる自己中心的で理不尽な要求や悪質な嫌がらせ・クレームなどの迷惑行為と、取引先などの労働者からのパワーハラスメントを指します。同じ調査で職場のパワーハラスメントが「あった」は5.3%で、カスタマーハラスメントの「あった」はそれとほぼ同じ水準です。
カスタマーハラスメント対策がある事業所は何%か
令和7年度は40.5%(911事業所のうち369)で、前年度の35.5%から5.0ポイント上がりました。ただし、すでに事業主の義務になっている他のハラスメント対策と比べると、まだ低い水準です。
| ハラスメントの種類 | 対策が「有」の事業所 | 回答した事業所 | 対策「有」の割合 |
|---|---|---|---|
| パワーハラスメント | 629 | 941 | 66.8% |
| マタニティハラスメント | 491 | 916 | 53.6% |
| カスタマーハラスメント | 369 | 911 | 40.5% |
パワーハラスメント対策の66.8%とは26.3ポイントの差があります。パワーハラスメントの防止措置は、中小企業でも令和4年4月から義務になっています。カスタマーハラスメントはこれから義務になる段階で、県内では10月1日の時点で対策のない事業所が多く残ると見られます。
対策がある事業所は、何をしているか
対策が「有」と答え、その内容を回答した353事業所の答え(複数回答)は次のとおりです。
| 対策の内容 | 事業所 | 割合 |
|---|---|---|
| 相談があった場合の迅速かつ適切な対応 | 233 | 66.0% |
| 相談窓口の設置 | 169 | 47.9% |
| 事実関係が判明した場合の適切な措置の実施 | 151 | 42.8% |
| 相談者・行為者等のプライバシーの保護 | 147 | 41.6% |
| 就業規則等による方針の明文化 | 142 | 40.2% |
| トップから職場のハラスメントをなくすというメッセージを発信 | 118 | 33.4% |
| 再発防止措置の徹底 | 114 | 32.3% |
| 相談や事実確認への協力を理由に不利益な取扱いを行わないことを定めて周知 | 96 | 27.2% |
| 研修会の開催 | 84 | 23.8% |
| 社内報やパンフレット等広報啓発資料の作成・配布 | 80 | 22.7% |
いちばん多いのは「相談があったら対応する」で、起きてから動く形です。一方、方針を就業規則などに書いている事業所は、対策がある事業所の中でも4割(142事業所)にとどまります。回答した911事業所全体で見ると、相談窓口を設けていると答えたのは169(18.6%)、方針を明文化していると答えたのは142(15.6%)です。
10月1日から、事業主は何をしなければならないか
厚生労働省によると、令和7年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置がすべての事業主の義務になります。厚生労働省の資料が示す措置は、大きく次の4つのまとまりです。
- 方針を決めて知らせる=カスタマーハラスメントには毅然と対応し、従業員を守るという方針をはっきりさせて周知する。どんな言動が当たるか、そのときどう対処するか(上司の指示を仰ぐ、できるだけ一人で対応させない、犯罪に当たりうる言動は警察へ通報する、など)もあらかじめ決めて知らせる
- 相談の体制を整える=相談窓口をあらかじめ決めて知らせ、担当者が適切に対応できるようにする
- 起きたあとに動く=事実関係を迅速かつ正確に確かめ、被害を受けた従業員に配慮し、再発を防ぐ
- あわせて行うこと=特に悪質なケースへの対処の方針を決めておく、相談した人のプライバシーを守る、相談したことを理由に不利益に扱わないと定めて知らせる
県の調査で多かった「相談があった場合の対応」は、このうち「起きたあとに動く」にあたります。義務になる措置の最初に並ぶのは、起きる前に方針と対処の仕方を決め、従業員に知らせておくことです。
自社に置き換えると
この調査から言えるのは、広島県の事業所では約6事業所に1つがカスタマーハラスメントを経験しているのに、対策があるのは4割で、方針を文書にしているのはさらにその4割だということです。
人数の少ない会社では、理不尽な電話や来店に対応するのは、たいてい経営者本人か、窓口に立つ1〜2人の従業員です。「困ったら私に言って」と口で伝えているだけでは、どこからがカスタマーハラスメントなのか、一人で対応を続けてよいのか、警察を呼んでよいのかを、従業員はその場で判断できません。10月から求められるのは、その判断の拠り所を文書にして渡しておくことです。
文書にする中身は、方針の一文、対処の手順(誰に代わるか、どこで打ち切るか、どこへ連絡するか)、相談窓口の案内、それに受けた事案を同じ項目で残す記録の様式です。経営者が口で話した考えや、これまでの実際の対応をAIに聞き取らせて下書きにし、経営者が確かめて直す形にすると、白紙から書くより短い時間で形になります。記録の様式が決まっていれば、事実関係を「迅速かつ正確に」確かめるときにも、あとから同じ形で振り返れます。
ただし、どの言動がカスタマーハラスメントに当たるか、就業規則にどう書くか、個別の事案にどう対応するかは、厚生労働省の指針やマニュアルを確かめ、労働局・社会保険労務士・弁護士などに相談して決めるものです。AIで判断してよいものではありません。
この統計を読むときの注意
- 県の独自調査で、回答した事業所の数字=県内に本社・本店がある常用雇用者10人以上の2,500事業所に郵送で調査し、1,017事業所(40.7%)が回答しました。9人以下の会社は対象外で、設問ごとに無回答があるため、集計した事業所の数は表ごとに違います
- 調査の時点=調査基準日は令和7年6月1日、カスタマーハラスメントの有無は令和6年4月〜令和7年3月の1年間についての回答です。10月1日からの義務化を受けた対応は、この数字にはまだ入っていません
- 県の調査と法律で、言葉の範囲が少し違う=県の調査は取引先などの労働者からのパワーハラスメントも含めてたずねています。法律上の定義や具体例は、厚生労働省の指針で確かめてください
- 業種別・市町別の数字は取り上げていない=本記事は県全体の数字です。竹原市・三原市など市町ごとの値は調査結果に示されていません
- 一部は当社の計算=「あった」と「あったと思う」をあわせた割合(16.4%・15.2%)、対策がない事業所の割合(59.5%)、パワーハラスメント・マタニティハラスメントの対策「有」の割合と差、911事業所全体に対する相談窓口・方針明文化の割合は、統計表の事業所数をもとに当社で計算しました。対策の内容の割合は県の公表値です
出典
- 広島県「広島県職場環境実態調査」
- 広島県商工労働局「令和7年度 広島県職場環境実態調査結果」(PDF・令和7年10月)
- 広島県商工労働局「令和7年度 広島県職場環境実態調査結果【統計表】」(PDF)
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
- 厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!カスタマーハラスメント対策の義務化」(PDF)
※本記事は2026年9月27日時点の公表情報にもとづいています。令和8年度の調査結果は、例年どおりであれば2026年10月ごろに公表されます。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
カスタマーハラスメントへの備えは、経営者の頭の中にある「こういう客にはこう対応する」を、従業員が読める文書にしておくことから始まります。手をつける順番は、方針と相談窓口の案内を文章にさせる、受けた事案を同じ項目で残す記録の様式をつくらせる、その場の対処の手順を誰が読んでも同じようにたどれる形に整えさせる、の3つです。
口で伝えてきた決まりを文書にする進め方は社内ルールの文書化に、手順を文章にして残す進め方は社内マニュアルにまとめています。
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