コラム
広島の70歳までの就業確保措置は32.2%で全国40位|伸びをつくったのは継続雇用制度だけ
広島県内で「70歳まで働ける制度」を用意している企業は32.2%です。報告した5,370社のうち1,727社。前年から3.1ポイントふえましたが、3社に2社はまだ用意していません。広島労働局が令和7年12月19日に公表した「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」の数字です。
もうひとつ、同じ資料から読める数字があります。65歳までの雇用確保措置のほうは99.5%が実施済みで、こちらはほぼ全部の会社が終えています。65歳までは行き渡っていて、その先で落ちる。落ちる場所がどこかを、規模別・業種別・全国比較まで見ていきます。
ベテランが残っても、その人しか知らない仕事は残ります。それを形にして渡す方法を記事の最後にまとめています →
広島県で70歳まで働ける制度がある会社はどれくらいか
32.2%、1,727社です。全国平均は34.8%なので、広島は2.6ポイント低いことになります。47都道府県で並べると40位(神奈川県と同率)で、下から数えて7番目です。
| 令和7年6月1日現在 | 広島県 | 全国 |
|---|---|---|
| 報告した企業数 | 5,370社 | 237,739社 |
| 65歳までの雇用確保措置 実施済み | 99.5% | 99.9% |
| 70歳までの就業確保措置 実施済み | 32.2% | 34.8% |
| 同 前年(令和6年) | 29.1% | 31.9% |
前年は広島29.1%・全国31.9%でしたから、差は2.8ポイントから2.6ポイントへ、わずかに縮んでいます。全国と同じ方向へ動いてはいるものの、追いついてはいません。
中国地方のなかで広島はどの位置か
5県のなかでいちばん低いのが広島です。しかも隣の島根県は47.0%で全国1位でした。
| 県 | 70歳までの就業確保措置 | 全国順位 |
|---|---|---|
| 島根 | 47.0% | 1位 |
| 岡山 | 38.2% | 23位 |
| 山口 | 35.9% | 26位 |
| 鳥取 | 34.7% | 34位 |
| 広島 | 32.2% | 40位 |
島根と広島で14.8ポイントの差があります。県境をまたいだだけでこれだけ違うので、「西日本だから」「地方だから」という説明では届きません。上位には島根に続いて大分45.7%、岩手45.0%、青森44.8%が並び、下位は東京27.8%、京都29.4%、富山29.4%です。都市部ほど低い傾向は読み取れて、広島はその都市部側に位置しています。
ふえた3.1ポイントの中身は何か
ほぼ全部が継続雇用制度です。70歳までの措置は5つの方法が認められていますが、内訳を前年と比べると次のようになります。
| 措置の内容 | 令和7年 | 令和6年 | 差 |
|---|---|---|---|
| 継続雇用制度の導入 | 24.7%(1,329社) | 21.7% | +3.0pt |
| 定年制の廃止 | 3.9%(208社) | 4.0% | ▲0.1pt |
| 定年の引上げ | 3.5%(188社) | 3.4% | +0.1pt |
| 創業支援等措置の導入 | 0.1%(2社) | 0.1% | 変動なし |
| 合計(実施済み) | 32.2% | 29.1% | +3.1pt |
3.1ポイントの伸びのうち3.0ポイントが継続雇用制度でした。定年そのものを動かした会社はほとんどふえていません。定年を廃止した会社はむしろ12社減っています。
継続雇用制度というのは、定年でいったん区切って、そのあと雇い直す形です。多くの場合、雇用契約も呼び名も条件も変わります。つまり広島でふえたのは「定年をなくした会社」ではなく、「定年のあとに続きを用意した会社」でした。
会社の規模で違いはあるか
小さい会社のほうが実施率は高くなっています。中小企業(21〜300人)が32.6%、大企業(301人以上)が26.4%で、6.2ポイントの差で中小が上回りました。さらに細かく割ると次のとおりです。
| 規模 | 70歳までの就業確保措置 | 前年 |
|---|---|---|
| 21〜30人 | 32.9% | 31.1% |
| 31〜50人 | 34.3% | 32.7% |
| 51〜100人 | 31.8% | 27.3% |
| 101〜300人 | 29.9% | 24.9% |
| 301〜500人 | 25.1% | 19.7% |
| 501〜1,000人 | 31.4% | 30.9% |
| 1,001人以上 | 21.7% | 20.0% |
いちばん高いのが31〜50人の34.3%、いちばん低いのが1,001人以上の21.7%です。制度を整えるだけなら大きい会社のほうが手が回りそうなものですが、実態は逆でした。人が抜けたときの穴が大きい会社ほど、残ってもらう道を用意している、と読むほうが実態に近いはずです。
業種別でも同じことが言えます。実施率が高いのは農林漁業42.9%、建設業41.6%、運輸・郵便業40.1%、医療・福祉38.8%。低いのは金融・保険業22.2%、生活関連サービス業22.4%、卸売業・小売業23.9%、情報通信業24.5%です。上位に並ぶのは、その人の経験がそのまま仕事の質になる現場でした。
65歳までのほうは今どうなっているか
99.5%が実施済みで、こちらは行き渡っています。ただし数字は前年の99.9%から0.4ポイント下がり、未実施の会社が6社から28社へふえました。
背景に制度の切り替わりがあります。平成24年度までに労使協定で継続雇用の対象者を絞る基準を決めていた会社には経過措置が認められていましたが、これが令和7年3月31日で終了しました。令和7年度からは「希望者全員」を65歳まで雇うことが全面的な義務になっています。基準で絞る形のままだった会社が、そのまま未実施に振り替わったかたちです。
その経過措置の最後の1年(令和6年6月1日〜令和7年3月31日)に64歳へ到達した801人の行き先も公表されています。基準に該当して継続雇用された人が94.5%、更新を希望しなかった人が5.4%、基準に該当せず継続雇用が終わった人は0.1%(1人)でした。基準はあっても、実際にはほとんど使われていなかったことになります。
定年は何歳に置かれているか
広島県内では60歳定年が58.9%で、いまも過半数です。
| 定年年齢 | 企業数 | 割合 |
|---|---|---|
| 定年制の廃止 | 208社 | 3.9% |
| 60歳 | 3,161社 | 58.9% |
| 61〜64歳 | 183社 | 3.4% |
| 65歳 | 1,569社 | 29.2% |
| 66〜69歳 | 61社 | 1.1% |
| 70歳以上 | 188社 | 3.5% |
65歳以上の定年(廃止を含む)は37.7%で、前年から1.1ポイントふえました。動いてはいますが、この速さだと過半数に届くまでにまだ何年もかかります。多くの会社では、いまも60歳で一度区切りが来ます。
制度を延ばしても残るものは何か
その人が持っている仕事です。ここが今回の集計でいちばん静かな数字だと思います。
継続雇用制度を導入している3,316社について、雇う先がどこかを見ると、94.6%が「自社のみ」でした。中小企業(21〜300人)では95.7%、21〜30人の会社にかぎると97.1%です。子会社や関連会社へ移る形は、大企業では16.7%ありますが、小さい会社にはほとんどありません。
| 規模 | 継続雇用先が「自社のみ」 |
|---|---|
| 21〜30人 | 97.1% |
| 31〜300人 | 95.2% |
| 301人以上 | 83.3% |
| 全体(21人以上) | 94.6% |
同じ職場に、同じ人が、たいてい同じ仕事のまま残ります。会社にとっては安心です。ただ、「その人しか分からない仕事」の量は1件も減っていません。65歳が70歳になっただけで、いつか来る日が5年先へ動いただけとも言えます。
広島県内で60歳定年の会社は3,161社。そこで働く人が65歳、70歳と延びていくあいだに、その人の頭のなかにある手順・言い回し・判断の理由は、たいてい書き出されないままです。急ぐ理由がないからで、それは責められることではありません。
いま手をつけるとしたら、どこからか
いちばん現実的なのは、その人がふだん出しているものを、出しながら形にしておくことです。あらためて時間を取ってマニュアルを書く、という進め方は、忙しい職場ではまず後回しになります。
- いつも送っている連絡やお断りの文面を、下書きの型として残しておく
- 打ち合わせや電話で決まったことを、その場で要点だけ整理して残す
- 同じ質問への答え方を、その人の言い方のまま集めておく
- 手順の説明を、聞き取ったそのままの言葉から文章に起こす
どれも新しい作業を足すのではなく、いま起きていることを記録に変えるだけです。ベテランが70歳まで働くとしても、この形が残っていれば、その5年は「引き継ぎの準備期間」になります。残っていなければ、5年後に同じ場所で同じことを考えることになります。
出典
- 広島労働局「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」(令和7年12月19日公表)
- 同 集計結果(PDF)(本文・表1〜表7)
- 広島労働局 報道発表資料(公表資料の一覧)
※本記事は2026年9月3日時点の公表情報にもとづいています。数値はすべて令和7年6月1日現在の報告を集計したもので、集計対象は広島県内で常時雇用する労働者が21人以上の企業5,370社(中小企業=21〜300人規模5,021社、大企業=301人以上349社)です。実施率・企業数・構成比・都道府県別の値は公表値です。全国順位と中国5県の並び、島根県との差、全国平均との差は、公表資料の表7をもとに弊社で並べ替え・計算した参考値です。順位は同率を含みます。公表資料は小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の合計が全体と一致しない場合があります。制度の適用可否や個別の手続きについては、広島労働局・ハローワークまたは社会保険労務士へご確認ください。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
70歳まで制度を延ばしても、その人が抱えている仕事はそのまま残ります。しかも継続雇用先の97.1%(21〜30人の会社)は自社です。同じ場所に残ってもらえる5年のあいだに、手順や言い回しを形にしておけるかどうかで、あとの景色が変わります。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
ご相談について
「どの作業なら任せられるのか、まだ分からない」という段階で、まったく問題ありません。オンラインは全国どこでも対応します。対面をご希望の場合は広島県内へお伺いします。竹原市に拠点があるため、竹原・三原・東広島は特にお伺いしやすい地域です。
更新のお知らせは公式LINEとブログで
残す
まとめる
書く