コラム
広島県のBCP(事業継続計画)は「策定している」18.0%、「策定の意向あり」45.5%で6年連続の5割未満|小規模企業は30.1%(帝国データバンク広島支店の2026年調査)と、計画書の前に仕事の手順を会社に残す考え方
帝国データバンク広島支店の「広島県・事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」(2026年6月30日発表)によると、広島県でBCPを「策定している」と答えた企業は18.0%(233社中42社)でした。「現在、策定中」「策定を検討している」を合わせた「策定の意向あり」は45.5%(106社)で、6年連続の5割未満です。全国の50.5%を5.0ポイント下回ります。
BCP(事業継続計画)は、災害や事故で事業が止まったときに、何を優先して続け、どう立て直すかをあらかじめ決めておく計画のことです。この記事では、県内の策定状況を規模別と業種別に読み、策定していない会社が挙げた理由を確かめたうえで、10人未満の会社が計画書の前に残しておけるものを整理します。BCPの作り方そのものは扱いません。
計画書を作る前の一歩として、「誰が、何を、どの順でやるか」をAIと一緒に書き出す選択肢を記事の最後にまとめています →
広島県でBCPを策定している企業はどのくらいか
「策定している」は18.0%で、回答した企業のおよそ5〜6社に1社です(233÷42の当サイトの割り算です)。「策定していない」は42.9%でした。
| 回答 | 広島県 | 全国 |
|---|---|---|
| 策定している | 18.0%(42社) | 21.4% |
| 現在、策定中 | 5.2%(12社) | 7.2% |
| 策定を検討している | 22.3%(52社) | 21.9% |
| 上の3つの合計(策定の意向あり) | 45.5%(106社) | 50.5% |
| 策定していない | 42.9%(100社) | 40.7% |
| 分からない | 11.6%(27社) | 8.8% |
「策定の意向あり」という言葉には、まだ手を付けていない「検討している」の22.3%が入っています。計画がすでにある会社だけを数えると18.0%で、全国の21.4%より3.4ポイント低い水準です(差は当サイトの引き算です)。「分からない」が11.6%あることも目を引きます。自社にBCPがあるかどうかを、回答した人が把握していない会社が1割ほどあるということです。
この10年で、策定は進んだのか
「策定している」は2017年の12.2%から2026年の18.0%へ上がりましたが、「策定の意向あり」は4割台でほぼ横ばいです。
| 調査の時期 | 策定の意向あり | うち策定している | 策定していない |
|---|---|---|---|
| 2017年5月 | 40.1% | 12.2% | 50.0% |
| 2018年5月 | 40.0% | 12.6% | 50.7% |
| 2019年5月 | 42.6% | 11.7% | 44.7% |
| 2020年5月 | 51.9% | 15.1% | 41.9% |
| 2021年5月 | 43.4% | 14.2% | 47.9% |
| 2022年5月 | 48.2% | 14.5% | 41.4% |
| 2023年5月 | 46.8% | 16.1% | 45.7% |
| 2024年5月 | 48.1% | 16.9% | 44.0% |
| 2025年5月 | 47.3% | 18.4% | 44.9% |
| 2026年5月 | 45.5% | 18.0% | 42.9% |
レポートは2つの出来事に触れています。2018年7月の西日本豪雨のあと、翌2019年5月の調査は42.6%で、前の年から2.6ポイントの上昇にとどまりました。コロナ禍に入った2020年5月の調査は51.9%で、9.3ポイント上がっています。5割を超えたのはこの年だけで、その後は6年続けて5割を下回っています。
県内で大きな被害が出た災害の翌年でも、意向のある会社の割合は大きく動きませんでした。「必要だと分かっていても進まない」理由が、気持ちの問題とは別のところにあることがうかがえます。理由はこのあとの見出しで確かめます。
会社の規模や業種で、どのくらい差があるか
規模が小さいほど策定は進んでいません。小規模企業の「策定の意向あり」は30.1%で、大企業の73.5%の半分に届きません。
| 規模 | 策定の意向あり | うち策定している | 策定していない | 回答社数 |
|---|---|---|---|---|
| 大企業 | 73.5% | 41.2% | 20.6% | 34社 |
| 中小企業 | 40.7% | 14.1% | 46.7% | 199社 |
| うち小規模企業 | 30.1% | 11.0% | 54.8% | 73社 |
小規模企業で「策定している」と答えたのは73社のうち8社で、およそ9社に1社です(当サイトの割り算です)。半数を超える54.8%が「策定していない」と答えています。
業種別は、回答が10社以上あった業種だけを並べます。
| 業種 | 策定の意向あり | 策定していない | 回答社数 |
|---|---|---|---|
| 運輸・倉庫 | 60.0% | 40.0% | 10社 |
| 製造 | 54.2% | 37.3% | 59社 |
| 卸売 | 48.1% | 44.4% | 54社 |
| 建設 | 41.4% | 48.3% | 29社 |
| サービス | 34.1% | 47.7% | 44社 |
| 小売 | 30.8% | 46.2% | 26社 |
運輸・倉庫と製造は5割を超え、小売とサービスは3割台です。ただし運輸・倉庫は回答が10社で、1社の回答で10ポイント動きます。業種の順位として読むより、「物を動かす・作る業種で意向が高く、店やサービスの業種で低い」という大まかな向きとして読むのが安全です。
どんなリスクを想定し、何を備えているのか
「策定の意向あり」の106社が想定するリスクの1位は自然災害で、73.6%でした。2位は情報セキュリティ上のリスクの46.2%です(複数回答)。
| 順位 | 事業の継続が難しくなると想定しているリスク | 2026年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自然災害(地震、風水害、噴火、干ばつなど) | 73.6% | 66.1% |
| 2 | 情報セキュリティ上のリスク(サイバー攻撃などを含む) | 46.2% | 42.1% |
| 3 | 設備の故障 | 41.5% | 30.6% |
| 4 | 自社業務管理システムの不具合・故障 | 38.7% | 29.8% |
| 4 | 物流(サプライチェーン)の混乱 | 38.7% | 29.8% |
| 6 | インフラ(電気・水道・ガスなど)の寸断 | 37.7% | 31.4% |
| 7 | 感染症 | 34.0% | 38.0% |
| 8 | 火災・爆発事故 | 31.1% | 24.0% |
上位6つは前の年より割合が上がり、感染症だけが下がりました。設備の故障と、自社の業務管理システムの不具合は、どちらも10ポイント前後の上昇です。災害だけでなく、「いつもの道具が動かない日」を想定する会社が増えています。
| 順位 | 実施・検討している備え | 2026年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 1 | 従業員の安否確認手段の整備 | 67.9% | 62.8% |
| 2 | 情報システムのバックアップ | 64.2% | 60.3% |
| 3 | 災害保険への加入 | 50.9% | 41.3% |
| 4 | 調達先・仕入先の分散 | 47.2% | 38.8% |
| 5 | 緊急時の指揮・命令系統の構築 | 41.5% | 33.9% |
備えの上位は、連絡の手段とデータの控えです。「緊急時の指揮・命令系統の構築」は41.5%で、意向のある会社のなかでも4割ほどにとどまります。誰が判断し、誰が代わりを務めるかを決めている会社は、安否確認やバックアップに比べて少ないということです。
策定していない会社は、何を理由に挙げているか
1位は「策定に必要なスキル・ノウハウがない」の38.0%です。「策定していない」と答えた100社に尋ねた結果です(複数回答)。
| 順位 | 策定していない理由 | 全体 | 中小企業 |
|---|---|---|---|
| 1 | 策定に必要なスキル・ノウハウがない | 38.0% | 37.6% |
| 2 | 自社のみ策定しても効果が期待できない | 29.0% | 28.0% |
| 3 | 策定する人材を確保できない | 28.0% | 29.0% |
| 3 | 書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい | 28.0% | 29.0% |
| 5 | 策定する時間を確保できない | 27.0% | 25.8% |
| 6 | 策定する必要性を感じない | 19.0% | 20.4% |
| 7 | リスクの具体的な想定が難しい | 12.0% | 11.8% |
| 8 | 策定する費用を確保できない | 11.0% | 10.8% |
「必要性を感じない」は19.0%で、6番目です。「費用を確保できない」は11.0%で最も低い位置にあります。上位に並ぶのは、やり方が分からない、作る人がいない、時間がない、作っても書類で終わる、の4つです。策定していない理由は、お金や関心より、手間と進め方の側にあります。
レポートに載っている企業の声にも、「具体的に理解できていない」(専門商品小売)、「検討したことがなかった」(食品製造)、「有事に備えてどこまで用意するのかの見極めが一番大変」(不動産)といった言葉があります。レポートはまとめで、BCPを大規模な計画と捉えすぎず、安否確認の手段、データのバックアップ、代わりの調達先の確保など、優先度の高いものから段階的に取り入れることを挙げています。
計画書の前に、会社に残しておけるものは何か
ここからはレポートの外の話で、当サイトの考えです。10人未満の会社では、得意先への連絡の順番、請求や支払いの段取り、取引先ごとの約束ごとを、経営者か担当者ひとりが覚えていることが珍しくありません。その人が出社できない日に、残った人が「誰が、何を、どの順でやるか」を知らなければ、建物も設備も無事なのに仕事が止まります。
BCPという名前の文書がなくても、次の3つは先に残しておけます。
- 毎月くり返す仕事の手順=請求、支払い、給与の計算、発注など、日が決まっていて止められない仕事を、担当者が口で説明して書き起こしたもの
- 連絡先と順番=止まったときに最初に知らせる得意先、仕入先、外注先の一覧と、誰から連絡するかの順番
- 代わりに判断する人=経営者に連絡がつかないときに、どこまでを誰が決めてよいかの取り決め
「スキル・ノウハウがない」「人がいない」「時間がない」の3つは、白紙から文書を書こうとすると重くなります。担当者がふだんのやり方を話して録音し、その録音と過去のメールや帳票をAIに渡して、手順書のたたき台を作らせる。本人が読んで直し、会社の共有の場所に置く。この進め方なら、書く作業の大半をAIに渡せます。「書類作りで終わる」という心配には、月に一度、その手順書を見ながら別の人が実際にやってみることで応えられます。
なお、手順を残せば災害の被害を防げる、という話ではありません。防災の設備、保険、資金の備え、BCPそのものの作り方は、商工会議所や公的な相談窓口、専門家と決めることです。当サイトが扱うのは、日々の仕事のやり方を会社に残すところまでです。代表者が動けない場面については帝国データバンク広島支店「広島県・事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」(2026年6月30日発表)
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
策定していない理由の上位は「やり方が分からない」「作る人がいない」「時間がない」でした。担当者が話した内容をAIが文章にまとめ、手順として会社に残し、別の人がそれをたどって動けるかを確かめる。この3つなら、計画書の名前が付く前から始められます。
毎月の仕事を手順書にする進め方は社内マニュアルに、担当が替わるときの備えは引き継ぎ資料にまとめています。
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