コラム
広島の職場の熱中症は令和7年58人で過去11年の最多|労災は前年の2.5倍、全国の伸びは43%増
広島県内の職場で令和7年に起きた熱中症の労働災害は58人でした。死亡と休業4日以上の業務上疾病を合わせた死傷者数で、広島労働局が公表している平成27年からの11年間ではいちばん多い人数です。前年は23人でしたので、35人ふえて約2.5倍になりました。死亡した方は1人で、建設業(土木工事業)で起きています。
同じ令和7年の全国は1,803人で、前年から約43%の増加でした。広島の増え方はこれを大きく上回っています。業種は製造業20人と建設業12人で全体の半分を超え、月別では7月だけで30人=年間の51.7%、年齢は40代と50代で6割を占めます。数字を業種・時期・年齢の順に見ていきます。
熱中症そのものは水分と休憩と暑さの管理の話ですが、令和7年6月から義務になった「手順をつくって関係者へ知らせる」部分は書き物の仕事です。この事務をAIへ渡す方法を記事の最後にまとめています →
広島の職場の熱中症は令和7年で何人か
58人です。広島労働局が公表している平成27年以降の11年間で最も多く、2番目に多い平成30年の32人からも26人多い人数です。推移は次のとおりです。
| 年 | 死傷者数 | うち死亡者数 |
|---|---|---|
| 平成27年 | 3人 | 1人 |
| 平成28年 | 15人 | 0人 |
| 平成29年 | 16人 | 2人 |
| 平成30年 | 32人 | 0人 |
| 令和元年 | 26人 | 1人 |
| 令和2年 | 24人 | 1人 |
| 令和3年 | 11人 | 0人 |
| 令和4年 | 20人 | 0人 |
| 令和5年 | 21人 | 1人 |
| 令和6年 | 23人 | 1人 |
| 令和7年 | 58人 | 1人 |
年ごとの上下は大きいものの、ここ数年は20人前後で動いていました。令和7年はその倍以上へ跳ねています。
全国の数字と並べると、広島の動き方の大きさが分かります。厚生労働省が令和8年5月に公表した確定値では、全国の死傷者数は1,803人で、前年の1,257人から546人・約43%の増加でした。統計を取り始めた平成17年以降で最多です。
| 区分 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 広島県(死傷者数) | 23人 | 58人 | +35人(約2.5倍) |
| 全国(死傷者数) | 1,257人 | 1,803人 | +546人(約43%増) |
| 広島県(死亡者数) | 1人 | 1人 | 増減なし |
| 全国(死亡者数) | 31人 | 19人 | -12人(約39%減) |
全国は死傷者数がふえる一方で、死亡者数は約4割減りました。厚生労働省は、令和7年6月から施行された労働安全衛生規則の改正で重篤化を防ぐ対策が進んだことが理由と考えられる、としています。また気象庁の値として、令和7年6月から8月の平均気温の偏差が基準値より2.36度高く、統計開始以来もっとも高かったことを、死傷者数の増加の一因に挙げています。
どの業種で起きているか
製造業が20人で最も多く、建設業12人、商業9人と続きます。前年からの動きも合わせて並べます。
| 業種 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 | 構成比(令和7年) |
|---|---|---|---|---|
| 製造業 | 2人 | 20人 | +18人 | 34.5% |
| 建設業 | 2人 | 12人 | +10人 | 20.7% |
| 商業 | 3人 | 9人 | +6人 | 15.5% |
| その他 | 5人 | 8人 | +3人 | 13.8% |
| 運送業 | 7人 | 7人 | 増減なし | 12.1% |
| 警備業 | 0人 | 1人 | +1人 | 1.7% |
| 清掃業 | 2人 | 1人 | -1人 | 1.7% |
| 農業・林業 | 2人 | 0人 | -2人 | 0.0% |
| 合計 | 23人 | 58人 | +35人 | 100.0% |
ふえた35人のうち、製造業と建設業の2業種で28人を占めます。前年がそれぞれ2人でしたので、この2つがまとめて跳ねた年ということになります。一方で運送業は7人で前年と同じでした。
全国の構成と比べると、広島は製造業への偏りが強く出ています。
| 業種 | 広島県の構成比 | 全国の構成比 |
|---|---|---|
| 製造業 | 34.5% | 20.2% |
| 建設業 | 20.7% | 16.2% |
| 商業 | 15.5% | 13.1% |
| 運送業 | 12.1% | 12.2% |
| 警備業 | 1.7% | 11.0% |
全国では警備業が11.0%を占めますが、広島は1人で1.7%でした。逆に製造業は全国の20.2%に対して広島は34.5%です。広島で熱中症が起きているのは、屋外の警備の現場よりも工場の中でした。ただし1年ぶんの58人という母数ですので、この差がそのまま毎年続くとまでは読めません。
なお11年を通した累計では、製造業68人、運送業42人、建設業41人の順で、この3業種で全体の約6割を占めています。
いつ起きているか
7月です。令和7年の58人のうち30人が7月に起きていて、1年の51.7%が7月のひと月に入っています。
| 月 | 広島県(令和7年) | 構成比 | 全国の構成比(令和7年) |
|---|---|---|---|
| 1〜5月 | 2人 | 3.4% | 1.9% |
| 6月 | 8人 | 13.8% | 14.9% |
| 7月 | 30人 | 51.7% | 39.8% |
| 8月 | 10人 | 17.2% | 32.3% |
| 9月 | 8人 | 13.8% | 10.4% |
| 10〜12月 | 0人 | 0.0% | 0.7% |
全国は7月39.8%・8月32.3%でならされていますが、広島は7月と8月が3倍の開きになりました。暑さが本格化した最初のひと月に集中しています。そして6月と9月にも8人ずつ、あわせて16人=27.6%が起きています。7月と8月だけを見ておけばよい、という形にはなっていません。
時間帯でも同じことが言えます。
| 時間帯 | 広島県(令和7年) |
|---|---|
| 0〜9時台 | 7人 |
| 10時台 | 4人 |
| 11時台 | 9人 |
| 12時台 | 6人 |
| 13時台 | 0人 |
| 14時台 | 5人 |
| 15時台 | 7人 |
| 16時台 | 6人 |
| 17時台 | 8人 |
| 18時台以降 | 6人 |
最も多いのは11時台の9人でした。正午より前だけで20人=34.5%が起きています。17時台と18時台以降を足すと14人=24.1%です。全国の資料でも、日中に重い症状が出ず、作業が終わったあとや帰宅後に体調が悪くなった事案が含まれると説明されています。
何歳の人に起きているか
40代と50代です。合わせて35人で、58人の60.3%を占めます。
| 年代 | 令和7年 | 構成比 |
|---|---|---|
| 10代 | 2人 | 3.4% |
| 20代 | 3人 | 5.2% |
| 30代 | 12人 | 20.7% |
| 40代 | 17人 | 29.3% |
| 50代 | 18人 | 31.0% |
| 60代 | 4人 | 6.9% |
| 70代以上 | 2人 | 3.4% |
ここは、直感と食い違うところかもしれません。60代以上は6人で10.3%にとどまります。50代以上でまとめても24人=41.4%で、全国の約52%より低い数字です。
広島の労働災害全体と比べると、違いがはっきりします。令和7年の労働災害3,383人のうち60歳以上は1,006人で29.7%でした。同じ広島の同じ年で、災害全体では3割が60歳以上、熱中症では1割です。熱中症は、現場の中心で働いている40代・50代に寄っています。
経験年数でも同じ傾向が出ています。
| 経験年数 | 令和7年 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 16人 | 27.6% |
| 1年以上5年未満 | 16人 | 27.6% |
| 5年以上10年未満 | 10人 | 17.2% |
| 10年以上20年未満 | 10人 | 17.2% |
| 20年以上30年未満 | 3人 | 5.2% |
| 30年以上 | 3人 | 5.2% |
1年未満と1年以上5年未満で32人=55.2%ですが、5年以上の人も26人=44.8%います。広島労働局も「近年は経験年数を問わず発生している」と書いています。慣れている人だけを対象から外せる、という数字にはなっていません。
令和7年6月から、事業者に義務づけられたこと
労働安全衛生規則が改正され、令和7年6月1日から施行されています。熱中症のおそれのある作業を行うときに、事業者が次の3つを講じることが義務になりました。
- 熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための報告体制の整備
- 熱中症の重篤化を防止するための措置手順の作成
- 1と2の体制や手順の関係作業者への周知
さらに令和8年3月には「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が策定され、暑さ指数(WBGT値)の把握とその値に応じた対策、糖尿病や高血圧症など発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を持つ方への配慮などが示されています。
どの作業が「熱中症のおそれのある作業」にあたるか、自社が該当するかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署へご確認ください。この記事は制度の内容をお伝えするものであって、適用の判断をするものではありません。
この数字を、経営者は何に使えるか
先に申し上げると、AIを入れれば熱中症が減る、という話ではありません。暑さ指数の測定、水分と塩分、休憩の取り方、体調が悪くなった人への対応は、産業医、労働衛生の専門家、所轄の労働基準監督署の領域です。この記事はその代わりにはなりません。
そのうえで、義務になった3つを読み直すと、経営者の手元に残る仕事の性質が見えてきます。体制を決めるのは判断ですが、手順を作ることと関係する人へ知らせることは、文章をつくって配る仕事です。しかも一度作って終わりではなく、作業や人が入れ替わるたびに直して、毎年配り直す種類の仕事になります。
ここに、この記事の数字が重なります。熱中症が起きているのは40代・50代で、経験5年以上の人も4割を超えていました。「あの人は分かっているから」で周知の範囲を狭めにくいということです。7月に半分が集中する一方で、6月と9月にも8人ずつ起きていますから、配る時期も1回では足りません。
弊社がお引き受けできるのは、判断そのものではなく、その手前の下ごしらえです。
- 専門家や監督署から示された内容を、自社の作業に合わせた手順の文章に起こす
- 朝礼や掲示で伝える内容を、毎回書き直さずに済むひな形にする
- だれに、いつ、何を知らせたかの記録を、あとから探せる形で残す
- 作業や担当が変わったときに、手順のどこを直すかを洗い出す
どれも「決める仕事」ではなく「書いて配る仕事」です。夏のいちばん忙しい時期に後回しになりやすい部分でもあります。ここをAIへ渡すと、その分の時間が経営者と現場に戻ります。
出典
- 広島労働局「災害統計・事例」(統計の一覧ページ)
- 同「令和7年 広島県の職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF)(推移・業種別・月別・時間帯別・経験年数別・年齢別)
- 厚生労働省「令和7年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』(確定値)を公表します」(令和8年5月27日発表・全国の数字と規則改正の説明)
- 同 別添1「令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」(PDF)(全国の業種別・月別・時間帯別・年齢別)
- 広島労働局「令和7年 災害発生状況のあらまし(新型コロナウイルス感染症を除く)」(PDF)(労働災害全体との比較に使用)
※本記事は2026年9月7日時点の公表情報にもとづいています。広島県の死傷者数・業種別・月別・時間帯別・年齢別・経験年数別の実数はすべて広島労働局の公表値、全国の実数は厚生労働省の公表値です。構成比、前年からの増減、7月と8月を足した割合、正午より前の合計、40代と50代の合計、5年以上の合計は、公表値をもとに弊社で計算した参考値です。構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100.0%にならない場合があります。広島県の「農業・林業」は公表資料では別の行ですが、令和7年がいずれも0人のため本記事の表ではまとめています。個別の作業が規制の対象にあたるかどうか、健康管理の要否については、所轄の労働基準監督署または産業医などの専門家へご確認ください。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
義務になった3つのうち、体制を決めるのは経営の判断ですが、手順を文章にすることと、それを関係する人へ知らせることは、書いて配る仕事です。作業や人が入れ替わるたびに直して、毎年配り直す種類の仕事でもあります。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
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