コラム
広島の労働災害は令和7年3,383人でこの18年の最多|76.6%は99人以下の職場、最多の型は転倒
広島県内で令和7年に起きた労働災害は3,383人でした。労働者死傷病報告にもとづく、休業4日以上の死傷者数です(新型コロナウイルス感染症へのり患による災害を除く)。前年の3,340人から43人ふえ、平成20年から令和7年までの18年間でいちばん多い人数になりました。広島労働局が公表している「令和7年 災害発生状況のあらまし」と「労働者死傷病報告による労働災害発生状況(確定版)」の数字です。
ふえた43人を年齢で割ると、向きが分かれていました。60歳以上が128人ふえ、60歳未満は85人減っています。事故の型でいちばん多いのは転倒の922人で、こちらも前年から88人ふえて全体の27.3%を占めます。そして起きている場所は、76.6%が従業員99人以下の職場でした。業種・規模・事故の型・年齢の4つに分けて見ていきます。
現場の段取りが一人に張りついたままだと、何かあったときに「その人しか知らない手順」を書き起こす仕事が丸ごと残ります。書いて残す仕事をAIへ渡す方法を記事の最後にまとめています →
広島の労働災害は令和7年で何人か
3,383人です。休業4日以上の死傷者数で、コロナへのり患による災害は除いた数字です。近年の推移は次のとおりです。
| 年 | 死傷者数(休業4日以上) | 死亡者数 |
|---|---|---|
| 令和元年 | 3,164人 | — |
| 令和2年 | 3,067人 | — |
| 令和3年 | 3,257人 | — |
| 令和4年 | 3,140人 | 27人 |
| 令和5年 | 3,375人 | 25人 |
| 令和6年 | 3,340人 | 18人 |
| 令和7年 | 3,383人 | 22人 |
公表資料には平成17年からのグラフが載っています。そこまでさかのぼると、3,383人を上回っていたのは平成19年(3,530人)が最後です。平成20年(3,331人)から令和7年までの18年間では、令和7年がいちばん多いということになります。
もうひとつ、同じ資料の中に向きの違う数字があります。コロナへのり患による災害を含めた集計です。
| 集計の範囲 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| コロナを含む | 3,708人 | 3,498人 | -210人(-5.7%) |
| コロナを除く | 3,340人 | 3,383人 | +43人(+1.3%) |
含めれば減っていて、除けばふえています。理由は単純で、コロナへのり患による災害が令和6年の368人から令和7年は115人へ減ったためです。「広島の労働災害は減った」と読むか「ふえた」と読むかは、どちらの集計を見たかで変わります。この記事では、以降すべてコロナを除いた3,383人の側で統一します。
ふえたのはどの業種か
43人の増加は、業種でならされた結果ではありません。ふえた業種と減った業種がはっきり分かれています。
| 業種 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 商業 | 492人 | 620人 | +128人(+26.0%) |
| 製造業 | 779人 | 818人 | +39人(+5.0%) |
| 清掃・と畜業 | 171人 | 194人 | +23人(+13.5%) |
| 接客娯楽業 | 177人 | 169人 | -8人(-4.5%) |
| 建設業 | 322人 | 314人 | -8人(-2.5%) |
| 保健衛生業 | 505人 | 477人 | -28人(-5.5%) |
| 運輸交通業 | 446人 | 409人 | -37人(-8.3%) |
| 全産業 | 3,340人 | 3,383人 | +43人(+1.3%) |
目立つのは商業の+128人です。全産業の増加が43人ですから、商業ひとつで増加分を上回っています。中身をさらに割ると、小売業が365人から434人へ69人増、卸売業が77人から108人へ31人増でした。
広島の労働災害を業種の大きさで並べると、製造業818人、商業620人、保健衛生業477人、運輸交通業409人、建設業314人の順です。製造業と建設業だけの話ではありません。お店、介護・福祉の現場、運送で、あわせて1,500人を超えています。
どのくらいの規模の職場で起きているか
ここがいちばん、経営者に関わる数字だと考えています。事業場の規模別に見ると次のようになります。
| 事業場の規模 | 令和7年 | 構成比 |
|---|---|---|
| 9人以下 | 575人 | 17.0% |
| 10〜29人 | 885人 | 26.2% |
| 30〜49人 | 528人 | 15.6% |
| 50〜99人 | 605人 | 17.9% |
| 100〜299人 | 559人 | 16.5% |
| 300人以上 | 231人 | 6.8% |
| 合計 | 3,383人 | 100.0% |
足し合わせると、99人以下の職場で2,593人=全体の76.6%が起きています。29人以下にしぼっても1,460人=43.2%です。逆に300人以上の事業場は231人で、全体の6.8%にとどまります。
これは令和7年に限った偏りではありません。令和6年も99人以下が2,572人で77.0%を占めていて、割合はほとんど動いていません。広島の労働災害は、構造として小さな職場で起きています。安全の担当者を専任で置ける規模ではない職場に、4件のうち3件が集まっている形です。
いちばん多い事故の型は何か
転倒です。922人で、全体の27.3%を占めます。前年からの動きも合わせて並べます。
| 事故の型 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 | 構成比(令和7年) |
|---|---|---|---|---|
| 転倒 | 834人 | 922人 | +88人 | 27.3% |
| 墜落・転落 | 511人 | 544人 | +33人 | 16.1% |
| 動作の反動・無理な動作 | 553人 | 535人 | -18人 | 15.8% |
| はさまれ・巻き込まれ | 339人 | 299人 | -40人 | 8.8% |
| 切れ・こすれ | 201人 | 193人 | -8人 | 5.7% |
| 交通事故(道路) | 171人 | 186人 | +15人 | 5.5% |
| 激突され | 123人 | 150人 | +27人 | 4.4% |
| 飛来・落下 | 180人 | 149人 | -31人 | 4.4% |
| 激突 | 180人 | 138人 | -42人 | 4.1% |
| その他 | 248人 | 267人 | +19人 | 7.9% |
10の型のうち、いちばん動いたのが転倒の+88人でした。全産業の増加が43人ですから、転倒がふえた分だけで増加分を超えています。転倒と「動作の反動・無理な動作」を足すと1,457人で、全体の43.1%です。機械や高所ではなく、歩く・持つ・かがむという日常の動作の側に、災害の4割が寄っています。
なお死亡災害は22人で、業種別では建設業が9人(40.9%)と最も多くなっています。死亡災害は死傷者数とは別の報告(死亡災害報告)で集計されているため、上の表とは集計の出どころが違います。
60歳以上はどれだけ占めるか
1,006人で、全体の29.7%です。年齢別の分布は次のとおりです。
| 年齢 | 令和6年 | 令和7年 | 構成比(令和7年) |
|---|---|---|---|
| 29歳以下 | 480人 | 490人 | 14.5% |
| 30〜49歳 | 1,061人 | 970人 | 28.7% |
| 50〜59歳 | 921人 | 917人 | 27.1% |
| 60〜64歳 | 350人 | 380人 | 11.2% |
| 65〜69歳 | 259人 | 285人 | 8.4% |
| 70〜74歳 | 166人 | 204人 | 6.0% |
| 75歳以上 | 103人 | 137人 | 4.1% |
| 60歳以上 小計 | 878人 | 1,006人 | 29.7% |
ここで冒頭の話に戻ります。60歳以上は前年から128人ふえ、60歳未満は85人減っています。全体の増加43人は、この2つの差し引きです。60歳以上の構成比も26.3%から29.7%へ、1年で3.4ポイント上がりました。広島の労働災害は「全体が少しふえた」のではなく、「高い年齢層でふえ、低い年齢層で減った」という動き方をしています。
業種によって、この偏りの強さはかなり違います。
| 業種 | 令和7年の死傷者数 | うち60歳以上 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 清掃・と畜業 | 194人 | 94人 | 48.5% |
| 小売業 | 434人 | 173人 | 39.9% |
| 保健衛生業 | 477人 | 169人 | 35.4% |
| 社会福祉施設 | 324人 | 111人 | 34.3% |
| 接客娯楽業 | 169人 | 55人 | 32.5% |
| 運輸交通業 | 409人 | 101人 | 24.7% |
| 建設業 | 314人 | 72人 | 22.9% |
| 製造業 | 818人 | 172人 | 21.0% |
| 全産業 | 3,383人 | 1,006人 | 29.7% |
清掃・と畜業では2人に1人近く、小売業では5人に2人が60歳以上です。70歳までの就業確保措置の回で見たとおり、広島では定年のあとも同じ職場に同じ人が残る形がふえています。その結果として、現場を支えているベテランの層が、そのまま災害の中心の層にもなっているという並びです。
この数字を、経営者は何に使えるか
先に申し上げると、AIを入れれば労働災害が減る、という話ではありません。作業のどこが危ないかの判断、設備や作業手順の是正、健康管理の要否は、労働基準監督署、産業医、労働安全のコンサルタント、社会保険労務士といった専門家の領域です。この記事はその判断の代わりにはなりません。
そのうえで、ここまでの数字から、経営者の手元に残る事務がひとつ見えます。60歳以上が3割を占め、清掃や小売では4割から5割近い。そして76.6%が99人以下の職場。この2つが重なると、現場のやり方は「長く勤めているその人の頭の中」に置かれたままになりがちです。安全の担当者を専任で置ける規模ではないので、手順書を整える時間もなかなか取れません。
ここで弊社がお引き受けできるのは、判断そのものではなく、その手前の下ごしらえです。
- ベテランに口頭で聞いた作業の段取りを、そのまま文章の手順に起こす
- ばらばらの覚え書きや写真の記録を、あとから探せる形にまとめる
- 朝礼や引き継ぎで伝えている注意点を、毎回書き直さずに済むひな形にする
- 過去にヒヤリとした出来事の記録を、業種別・場所別に並べ直す
どれも「決める仕事」ではなく「書いて残す仕事」です。人に張りついたまま後回しになりやすい部分でもあります。ここをAIへ渡すと、その分の時間が経営者と現場に戻ります。
出典
- 広島労働局「災害統計・事例」(統計の一覧ページ)
- 同「令和7年 災害発生状況のあらまし(新型コロナウイルス感染症を除く)」(PDF)(業種別・規模別・年齢別・事故の型別)
- 同「令和7年 労働者死傷病報告に基づく労働災害発生状況(確定版)」(PDF)(業種別の前年比較・コロナを含む集計)
- 同「令和6年 災害発生状況のあらまし」(PDF)(前年の年齢別・事故の型別との比較に使用)
※本記事は2026年9月5日時点の公表情報にもとづいています。死傷者数・業種別・規模別・年齢別・事故の型別の実数は、すべて広島労働局の公表値です。年齢層をまとめた小計(29歳以下・30〜49歳・50〜59歳・60歳以上)、60歳以上の割合、99人以下および29人以下の小計と構成比、転倒と動作の反動を足した1,457人と43.1%、小売業・卸売業の前年増減は、公表値をもとに弊社で計算した参考値です。構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100.0%にならない場合があります。なお公表PDFの「業種別死傷災害発生状況」の表側には過年度の数値が残っているため、本記事では同じページの円グラフおよび業種別・規模別・年齢別の各表(表8・表9)と確定版の数値を用いています。個別の作業の危険性の判断、法令の適用については、所轄の労働基準監督署または労働安全衛生の専門家へご確認ください。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
長く勤めている人ほど、作業の順番も、気をつける場所も、頭の中に入っています。その中身を誰でも読める文章にしておく仕事は、判断ではなく書き写しですが、たいてい一人に張りついたまま後回しになります。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
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