コラム
広島の総合労働相談は年30,398件でほぼ横ばい|増えたのは助言・指導46.5%とあっせん83.8%
広島県内の総合労働相談は、令和7年度で30,398件でした。前年度から2.1%ふえていますが、7年分を並べるとほぼ横ばいです。広島労働局が令和8年8月17日に公表した「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の数字です。
同じ資料で大きく動いていたのは、相談の件数ではありませんでした。労働局長による助言・指導が227件(前年度比46.5%増)、紛争調整委員会によるあっせんが68件(同83.8%増)。相談の入口は横ばいのまま、行政に間へ入ってもらう段階まで進んだ件数だけがふえています。どこで何が起きているのかを、内容別・段階別に見ていきます。
もめごとの多くは、あとから記録を探すところから始まります。書いて残す仕事をAIへ渡す方法を記事の最後にまとめています →
広島の総合労働相談は年に何件あるか
30,398件です。総合労働相談コーナーは広島労働局と労働基準監督署に置かれていて、県内9か所であらゆる労働相談をまとめて受けています。内訳は次のとおりです。
| 令和7年度 | 件数 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 総合労働相談 | 30,398件 | +2.1% |
| うち 法令・制度の問い合わせ | 19,520件 | +0.1% |
| うち 労働基準法等の違反の疑いがあるもの | 6,613件 | +14.7% |
| うち 民事上の個別労働紛争の相談 | 6,069件 | +6.4% |
内訳を足すと32,202件になり、全体の30,398件を1,804件上回ります。1回の相談が複数の内容にまたがる場合、内容ごとに数えているためです。合計が合わないのは間違いではありません。
ここで目を引くのは、3つの内訳の伸び方がそろっていない点です。「法令・制度の問い合わせ」は0.1%増で止まっているのに、「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」だけが14.7%ふえています。制度を知りたいという相談は去年と同じ量で、自分の職場は法律に触れているのではないかという相談がふえた、という形です。
7年分の推移も見ておきます。
| 年度 | 総合労働相談 | 民事上の個別労働紛争 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 25,871件 | 6,595件 |
| 令和2年度 | 32,088件 | 6,315件 |
| 令和3年度 | 26,798件 | 6,290件 |
| 令和4年度 | 26,901件 | 5,819件 |
| 令和5年度 | 33,035件 | 6,943件 |
| 令和6年度 | 29,787件 | 5,704件 |
| 令和7年度 | 30,398件 | 6,069件 |
7年のあいだ、総合労働相談はおよそ2.6万件から3.3万件のあいだを行き来しています。令和7年度の30,398件は、その幅のまんなかあたりです。件数だけを見て「相談がふえた」とは言いにくい水準になります。
増えたのは相談ではなく、どの段階か
個別労働紛争解決制度には3つの段階があります。まず総合労働相談で話を聞く。解決しなければ、労働局長が当事者に解決の方向を示す助言・指導。それでも収まらなければ、弁護士や大学教授などのあっせん委員が間に入るあっせんです。相談は無料で、助言・指導もあっせんも申出・申請そのものに費用はかかりません。
令和7年度に動いたのは、2段目と3段目でした。
| 年度 | 助言・指導 申出 | あっせん 申請受理 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 163件 | 50件 |
| 令和2年度 | 171件 | 56件 |
| 令和3年度 | 164件 | 67件 |
| 令和4年度 | 137件 | 34件 |
| 令和5年度 | 173件 | 35件 |
| 令和6年度 | 155件 | 37件 |
| 令和7年度 | 227件 | 68件 |
助言・指導の227件は、表にある7年でいちばん多い件数です。2番目に多い令和5年度の173件を54件上回ります。あっせんの68件も7年で最多で、次点は令和3年度の67件でした。令和6年度と比べると、助言・指導は155件から227件へ、あっせんは37件から68件へ、ほぼ倍に近い動き方をしています。
相談の入口は横ばい、その先へ進む件数は倍近く。同じ量の相談から、行政に間へ入ってもらうところまで行く件数がふえた、という読み方になります。
どんな内容でもめているか
民事上の個別労働紛争6,069件を内容別に数え直したのが次の表です。1回の相談で複数の内容にまたがる場合は内容ごとに数えるため、延べ7,026件になります。
| 相談内容 | 件数 | 構成比 | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| いじめ・嫌がらせ | 1,226件 | 17.4% | +13.0% |
| 解雇 | 867件 | 12.3% | +20.1% |
| 自己都合退職 | 773件 | 11.0% | — |
| 労働条件の引下げ | 709件 | 10.1% | +3.1% |
| 退職勧奨 | 487件 | 6.9% | — |
| 雇止め | 322件 | 4.6% | +24.8% |
| ほか 計 | 2,642件 | 37.6% | — |
| 合計(延べ) | 7,026件 | 100% | — |
最多はいじめ・嫌がらせの1,226件で、これは資料でも引き続き最多と書かれています。ただし数字の読み方に注意がいります。令和4年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行から、同法にあたる職場のパワーハラスメントの相談は別に集計されるようになりました。この1,226件にパワーハラスメントの相談1,164件を足した2,390件が、いじめ・嫌がらせの全体像です。前年度は2,490件だったので、全体では2年続けて減っています。
伸び率が大きいのは雇止めの24.8%増と解雇の20.1%増でした。いじめ・嫌がらせは13.0%増、労働条件の引下げは3.1%増です。同じ資料の言い方に合わせると、最多は変わらないまま、その周りが動いた年でした。
なお、自己都合退職とは、退職させてもらえない、あるいは会社都合なのに自己都合退職とされる、といった相談を指します。解雇は普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の合計です。
辞める場面はどれくらいを占めるか
内容別の表を、人が辞める場面かどうかで括り直してみます。
| 辞める・辞めさせる場面の相談 | 件数 |
|---|---|
| 解雇 | 867件 |
| 自己都合退職 | 773件 |
| 退職勧奨 | 487件 |
| 雇止め | 322件 |
| 小計 | 2,449件 |
| 延べ相談件数に占める割合 | 34.9% |
延べ7,026件のうち2,449件、およそ3件に1件が、人が職場を離れる場面で起きています。いじめ・嫌がらせの1,226件を足すと3,675件で、全体の52.3%です。
この構成は、前回に見た高年齢者の就業確保措置と裏表の関係にあります。県内では70歳まで働ける制度を用意した会社が32.2%まで来て、続けて働いてもらう仕組みは広がりました。一方で、実際に人が離れる場面のもめごとは、相談の3分の1を占めたままです。人に残ってもらう制度をつくる話と、離れるときに何が起きるかという話は、別々に進みます。
あっせんまで進んだ68件は何を争っているか
3段目のあっせんは68件で、内容別に数えると延べ82件でした。
| あっせん申請の内容(令和7年度・延べ82件) | 件数 |
|---|---|
| いじめ・嫌がらせ | 22件 |
| 解雇 | 13件 |
| 賠償 | 13件 |
| 雇止め | 11件 |
| 労働条件の引下げ | 6件 |
| 自己都合退職 | 3件 |
| その他の労働条件 | 3件 |
| 出向・配置転換/人事評価 | 各2件 |
| 退職勧奨/懲戒処分 | 各1件 |
| その他 | 5件 |
相談の段階で最多だったいじめ・嫌がらせが、あっせんでも最多です。目を引くのは賠償の13件で、解雇と同じ数まで来ています。相談の段階では「ほか」に含まれる小さな項目が、間に人を入れる段階では上位に並びます。
2段目の助言・指導227件も、内容別では延べ295件のうちいじめ・嫌がらせ56件が最多で、以下は自己都合退職25件、労働条件の引下げ25件、解雇21件、退職勧奨17件、出向・配置転換17件、雇止め14件と続きます。ほかに「その他の労働条件」が54件あります。
この数字から、いま手をつけられることは何か
はじめにお断りしておくと、AIを入れれば労働紛争が起きなくなる、という話ではありません。何が違反にあたるか、どう対応すべきかは法律の判断で、広島労働局の総合労働相談コーナーや社会保険労務士、弁護士に確かめる領域です。ここで書けるのは、その手前にある事務の話だけです。
この資料から読めるのは、もめごとの多くが「あとから確かめようとしても、書いたものが残っていない」場面で膨らむということです。労働条件の引下げが709件、自己都合退職が773件あるということは、条件をいつどう伝えたか、退職の申し出はどちらから出たかを、後から示せるかどうかが問われる場面がそれだけあるということでもあります。
そして、その「書いて残す」仕事は、たいてい一人に張りついています。労働条件通知書をつくる人、面談のメモを残す人、就業規則を引っ張り出してくる人が、たまたま同じ一人だという会社は珍しくありません。手が回らないときに真っ先に後回しになるのも、この種の仕事です。
AIに渡せるのは、判断ではなく、次のような下ごしらえの部分です。
- 面談や打ち合わせの録音から、日付・出席者・話した内容の要点を整理して残す
- 労働条件を伝える書面の下書きを、自社の様式に合わせて用意する
- 就業規則や規程のどこに書いてあるかを探して、該当箇所を抜き出す
- 問い合わせへの返信文の下書きを、過去のやりとりに合わせてそろえる
いずれも最後は人が読んで直します。それでも、真っ白から書き始めるのと、下書きを直すのとでは、かかる時間が変わります。ここが軽くなると、記録を残す作業を後回しにしにくくなります。
広島県内の相談は年30,398件で、そのうち行政に間へ入ってもらう段階まで進んだのが295件(助言・指導227件+あっせん68件)です。数としては1%に届きません。ただ、その1%に自社が入るかどうかは件数では決まりません。手元に何が残っているかで決まります。
出典
- 広島労働局「個別労働紛争解決制度の施行状況」(公表資料の一覧)
- 「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(PDF)(令和8年8月17日公表・資料1・資料2を含む)
- 同(令和6年度)(PDF)(前年度との比較に使用)
※本記事は2026年9月4日時点の公表情報にもとづいています。件数・構成比・前年度比はすべて広島労働局の公表値です。辞める場面の小計2,449件と割合34.9%、いじめ・嫌がらせを含めた3,675件と52.3%、助言・指導とあっせんの合計295件は、公表値をもとに弊社で足し合わせた参考値です。内訳の合計が全体と一致しないのは、1回の相談・申出・申請が複数の内容にまたがる場合に内容ごとに計上しているためで、公表資料に注記があります。自己都合退職と退職勧奨の前年度比は公表資料に明記がないため空欄にしています。個別の事案の取り扱い、法令の適用については、広島労働局の総合労働相談コーナー、社会保険労務士または弁護士へご確認ください。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
条件をいつ伝えたか、面談で何を話したか。あとから確かめられる形にしておく仕事は、たいてい一人に張りついていて、忙しい時期ほど後回しになります。判断は専門家に任せるとして、その手前の「書いて残す」ところは渡せます。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
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