コラム
広島の高卒求人倍率4.57倍、就職希望は2,296人|採用で埋める前に決めること
来年3月に高校を卒業する生徒に向けた広島県内の求人は、10,485人分です。これに対して、学校やハローワークを通じて就職を希望している生徒は2,296人。求人倍率は4.57倍になりました。広島労働局が2026年8月27日に公表した数字です。
生徒1人に対して求人が4.57件ある状態で、統計をさかのぼれる平成4年3月卒以降で2番目の高さです。ただし「高卒は採れない」で終わらせると、自社で何を決めればいいのかが出てきません。求人の中身を規模別・職業別に割ると、決めるべきことがはっきりします。
高卒採用の枠を取りに行く前に、事務をAIへ渡す選択肢を記事の最後にまとめています →
高卒求人10,485人に対し、就職を希望する生徒は2,296人
まず全体の数字です。令和8年7月末時点の受理状況で、前年の同じ時期と並べます。
| 令和9年3月卒 | 令和8年3月卒 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 高卒求人数 | 10,485人 | 10,333人 | +152人(+1.5%) |
| 求職者数 | 2,296人 | 2,386人 | -90人(-3.8%) |
| 求人倍率 | 4.57倍 | 4.33倍 | +0.24ポイント |
求職者数は2年ぶりの減少です。倍率が上がった要因は、求人が1.5%増えたことよりも、就職を希望する生徒が3.8%減ったことのほうが大きく効いています。
倍率が上がったのは、求人が増えたからではない
35年分の推移を並べると、この形がはっきりします。
| 卒業年次 | 高卒求人数 | 求職者数 | 求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 平成4年3月卒 | 30,508人 | 8,861人 | 3.44倍 |
| 平成15年3月卒 | 2,686人 | 3,580人 | 0.75倍 |
| 令和2年3月卒 | 10,605人 | 3,447人 | 3.08倍 |
| 令和5年3月卒 | 8,903人 | 2,504人 | 3.56倍 |
| 令和7年3月卒 | 10,650人 | 2,292人 | 4.65倍 |
| 令和9年3月卒 | 10,485人 | 2,296人 | 4.57倍 |
平成4年3月卒と比べると、求人は30,508人から10,485人へ約66%減っています。同じ期間に求職者は8,861人から2,296人へ約74%減りました。求人も減っていますが、生徒の減り方のほうが大きいため、倍率は3.44倍から4.57倍へ上がっています。
いちばん低かったのは平成15年3月卒の0.75倍です。このときは求人2,686人に対して求職者が3,580人いました。20年あまりで、求人と生徒の関係が逆になっています。
従業員29人以下の会社が、求人の3割を出している
ここからが自社に効く部分です。10,485人の求人を、募集した会社の規模で割ります。
| 企業規模 | 求人数 | 構成比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 29人以下 | 3,278人 | 31.3% | +94人(+3.0%) |
| 30〜99人 | 2,734人 | 26.1% | -78人(-2.8%) |
| 100〜299人 | 1,974人 | 18.8% | +32人(+1.6%) |
| 300〜499人 | 1,132人 | 10.8% | +143人(+14.5%) |
| 500〜999人 | 567人 | 5.4% | -37人(-6.1%) |
| 1,000人以上 | 800人 | 7.6% | -2人(-0.2%) |
29人以下の会社だけで3,278人分を募集しています。県内で就職を希望している生徒は全部で2,296人ですから、その全員が29人以下の会社に行ったとしても、982人分の求人が埋まらない計算になります。99人以下まで広げると6,012人分(全体の57.3%)です。
増え方が最も大きいのは300〜499人の規模で、前年より14.5%増やしています。小さい会社と同じ生徒を、採用に手をかけられる規模の会社が取りに来ている年ということです。
求人の4割は生産工程。事務は656人
次に、どんな仕事の募集なのかを見ます。
| 職業 | 求人数 | 構成比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 生産工程 | 4,181人 | 39.9% | +372人(+9.8%) |
| 建設・採掘・運搬等 | 1,604人 | 15.3% | -22人(-1.4%) |
| サービス | 996人 | 9.5% | -178人(-15.2%) |
| 管理、専門、技術 | 935人 | 8.9% | -32人(-3.3%) |
| 販売 | 727人 | 6.9% | +49人(+7.2%) |
| 定置・建設機械運転、電気工事 | 624人 | 6.0% | -20人(-3.1%) |
| 輸送 | 618人 | 5.9% | +12人(+2.0%) |
| 事務 | 656人 | 6.3% | -12人(-1.8%) |
生産工程だけで全体の約4割です。これに建設・採掘・運搬等と機械運転を足すと、現場を担う職業で6割を超えます。事務は656人で、全体の6.3%しかありません。前年より12人減っています。
産業別でも同じ向きが出ています。増えたのは卸売業・小売業(1,510人・+163人)と製造業(3,475人・+84人)で、なかでも輸送用機械器具製造業が1,237人(+132人)と伸ばしました。減ったのは生活関連サービス業・娯楽業(140人・-113人)と医療、福祉(466人・-76人)です。
つまり広島の高卒採用は、現場の担い手を確保する場になっています。事務職として高校生を採ろうとしている会社は、もともと多くありません。
採用したときにかかる額も見ておく
今年3月に卒業して県内に就職した人の初任給です。広島労働局が集計した平均額で、残業手当や賞与は含みません。
| 区分 | 高校卒の初任給(月額) |
|---|---|
| 事務的職業 | 208,000円 |
| 生産工程・労務の職業 | 213,000円 |
| 販売の職業 | 216,000円 |
| サービスの職業 | 212,000円 |
| 企業規模5〜29人 | 210,000円 |
| 企業規模30〜99人 | 214,000円 |
事務的職業は月208,000円です。12か月で2,496,000円になります。ここに社会保険料、賞与、残業手当、募集にかかる費用が乗ります。参考までに、広島県の最低賃金で1日8時間・月20日を組むと、2026年10月10日までの1,085円なら月173,600円・年2,083,200円、10月11日からの1,141円なら月182,560円・年2,190,720円です。高卒の初任給はこれより上に置かれています。
採用そのものの日程も決まっています。学校からの推薦は9月5日以降、採用選考は9月16日以降です。求人票の受付は6月から始まっているため、いま動く場合は準備できる時間が限られます。
埋める仕事と、任せ方を変える仕事を分ける
ここまでの数字を自社に当てはめると、順番はこうなります。
- いま埋めたい仕事は、高卒採用で埋まる側か(生産工程・運搬・機械運転・販売)
- 埋まらない側の仕事に、経営者や既存の社員の時間がどれだけ取られているか
- 取られている時間のうち、毎回だいたい同じ形で終わる作業はどれか
現場の人手は、採るしかない部分が大きく残ります。一方で事務は、高卒求人が656人しかない代わりに、一般の求人市場では応募が集まる側です。広島県の事務従事者の有効求人倍率は0.40倍、一般事務にしぼると0.30倍でした。この違いは広島県の有効求人倍率1.33倍、事務職は0.40倍で扱っています。
ただし応募が集まることと、専任を1人置けるだけの仕事量があることは別です。従業者4人以下の事業所が多い地域では、事務の仕事量が1人分に届かないまま経営者が抱えている形がよく見られます。この地域構造は竹原市の事業所1,193件のうち752件が4人以下にまとめました。
弊社がこれまでに支援した7社(眼鏡店・歯科・内科・スクール・住宅リフォーム)のなかで実測できているのは、メール返信が1時間から15分になった例です。1日1時間かかっていた作業が15分になると、1日あたり45分が戻ります。
任せやすいのは、毎回だいたい同じ形で、判断より作業のほうが多い仕事です。
- メールの返信(朝、下書きが揃っている状態に)
- 見積書・請求書(数字を入れるだけの形に)
- 議事録(録音を渡すと、議事録と宿題リストに)
- 日報・記録(話すだけで貯まる形に)
- 夜間・休日の一次対応(公式LINEでの自動応答)
採用に向ける力を現場の募集に集中させるために、事務のほうを先に軽くしておく。高卒求人の中身を見ると、この順番が現実的です。
まとめ
- 令和9年3月卒の広島県内の高卒求人は10,485人、就職希望の生徒は2,296人、求人倍率は4.57倍(令和8年7月末現在)
- 過去2番目の高さ。ただし求人は前年比+1.5%で、倍率を押し上げているのは求職者の-3.8%のほう
- 従業員29人以下の会社が3,278人(全体の31.3%)を募集。県内の就職希望者全員が来ても982人分足りない
- 求人の39.9%は生産工程。事務は656人(6.3%)で、高卒で事務を採る会社はもともと少ない
- 高卒・事務的職業の初任給は月208,000円(令和8年3月卒・残業手当と賞与を除く)
- 学校推薦は9月5日以降、採用選考は9月16日以降
- 先に決めるのは、高卒採用で埋める仕事と、任せ方を変える仕事の線引き
出典
- 広島労働局「令和9年3月高卒求人受理状況(令和8年7月末現在)」(令和8年8月27日公表。求人数・求職者数・求人倍率・産業別・職業別・規模別)
- 広島労働局「令和8年3月 新規学卒者の初任給状況(確定版)」(産業別・職業別・規模別の初任給)
- 広島労働局「職業紹介・雇用失業情勢」(上記2資料の掲載ページ)
- 広島労働局「広島県の最低賃金について」(10月10日まで1,085円・10月11日から1,141円)
※本記事は2026年8月28日時点の公表情報にもとづいています。構成比、35年前との増減率、29人以下の求人と求職者数の差、初任給の年額換算、最低賃金での月額・年額は、公表値をもとに弊社で計算しました。初任給は令和8年3月卒の実績で、令和9年3月卒の水準を示すものではありません。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
高卒求人のうち事務は656人でした。事務は高校生を採って任せる仕事ではなくなってきています。採用にかける力を現場の募集へ向けるために、事務のほうを先に軽くしておく手があります。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
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