コラム
日銀短観の広島県分(2026年6月調査)|雇用人員判断D.I.は▲29、3か月後は▲36。製造業は仕入価格71に対し販売価格45
日本銀行広島支店が2026年7月1日に公表した短観(全国企業短期経済観測調査)の広島県分で、人の過不足を示す雇用人員判断D.I.は、全産業で▲29でした。3か月後の見込み(先行き)は▲36で、人が足りないと答える会社の側へ7ポイント深まる見込みです。
同じ調査の製造業では、仕入価格が上がったとする仕入価格判断D.I.が71、販売価格の販売価格判断D.I.が45で、両者の差は1年前の14ポイントから26ポイントに開きました。人が足りない話と、上がった仕入れを売値に移しきれていない話が、1つの調査に並んでいます。広島県の224社の回答から読んでいきます。
人が足りないまま値上げの案内や見積の出し直しがふえるとき、その事務を人に張りつけたままにしない方法を記事の最後にまとめています →
短観の「D.I.」は何を表しているか
短観は、日本銀行が3か月ごとに企業へ景気や雇用の見方を尋ねる調査です。広島県分は225社が対象で、今回は224社(製造業112社・非製造業112社)が回答しました。回答期間は5月28日から6月30日です。
判断の項目は、3つの選択肢から選んだ会社の割合をD.I.(ディフュージョン・インデックス)という1つの数字にまとめます。雇用人員判断なら「過剰」と答えた会社の割合から「不足」と答えた会社の割合を引いたもので、▲29は「不足」と答えた会社が「過剰」と答えた会社より29ポイント多いという意味です。何人足りないかを表す数字ではありません。
もうひとつ押さえておきたいのが対象の範囲です。短観の規模区分は資本金で分けていて、中小企業は資本金2千万円以上1億円未満の会社を指します。それより小さい会社や個人事業主の回答は入っていません。
広島県の雇用人員判断D.I.はいくつか
全産業で▲29、3か月後の先行きは▲36です。この1年の推移を並べます。
| 区分 | 25年6月 | 25年9月 | 25年12月 | 26年3月 | 26年6月 | 先行き |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 広島 全産業 | ▲29 | ▲29 | ▲34 | ▲30 | ▲29 | ▲36 |
| 広島 製造業 | ▲16 | ▲16 | ▲23 | ▲25 | ▲21 | ▲29 |
| 広島 非製造業 | ▲43 | ▲44 | ▲46 | ▲35 | ▲38 | ▲43 |
| 中国地区 全産業 | ▲34 | ▲35 | ▲36 | ▲36 | ▲31 | ▲37 |
1年を通じて、ずっと「不足」の側にあります。非製造業は▲35から▲46の間を動き、製造業(▲16から▲25)より不足感の強い状態が続いています。6月は、製造業が3月の▲25から▲21へ、非製造業が▲35から▲38へ動き、全産業では▲29でした。中国地区5県の全産業は▲31です。
6月と12月の調査だけで尋ねている新卒採用計画(前年度比)は、広島県の全産業で2025年度の実績が▲7.2%、2026年度の計画が+0.6%、2027年度の計画が+2.3%でした。
3か月後の「先行き」は、実際と比べてどうだったか
先行きは、回答した会社が見込んでいる3か月後の姿です。前回の3月調査でも先行きが出ていたので、その見込みと6月の実際を並べます。
| 区分 | 3月調査での先行き | 6月の実際 | 差 |
|---|---|---|---|
| 全産業 | ▲37 | ▲29 | 8ポイント浅かった |
| 製造業 | ▲32 | ▲21 | 11ポイント浅かった |
| 非製造業 | ▲42 | ▲38 | 4ポイント浅かった |
3月の時点では「3か月後はもっと足りなくなる」と見込まれていましたが、6月の実際はそこまで深まりませんでした。ただし比べられるのはこの1回分だけで、先行きがいつも厳しめに出る、とまでは言えません。今回の先行き▲36も見込みとして読むのがよさそうです。それでも、見込みも実際も「不足」の側にあることは変わりません。
仕入価格と販売価格の差は開いたか(製造業)
開きました。広島県の製造業の価格判断を並べます。
| 区分 | 25年6月 | 25年9月 | 25年12月 | 26年3月 | 26年6月 | 先行き |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 仕入価格判断D.I. | 46 | 51 | 48 | 53 | 71 | 73 |
| 販売価格判断D.I. | 32 | 31 | 32 | 33 | 45 | 53 |
| 差(仕入−販売) | 14 | 20 | 16 | 20 | 26 | 20 |
どちらのD.I.も「上昇」と答えた会社の割合から「下落」と答えた会社の割合を引いたもので、差の行は弊社で計算しました。6月は3月と比べて仕入価格が18ポイント、販売価格が12ポイント上がり、差は26ポイントとこの1年でいちばん大きくなりました。3か月後の見込みでは販売価格が53まで上がり、差は20ポイントに縮まる見込みです。
この差が示しているのは、「仕入れが上がった」と答える会社の多さに、「売値を上げた」と答える会社の多さが追いついていない、ということです。1社ごとにどれだけ価格転嫁できたかの割合ではない点に注意してください。また、この資料の価格判断は製造業だけで、非製造業の広島県分の表はありません。
業況判断は、会社の規模で違うか
広島県の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)は、全産業で22、3か月後の先行きは13です。全産業の規模別に並べます。
| 規模(全産業) | 26年3月 | 26年6月 | 先行き |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 19 | 16 | 11 |
| 中堅企業 | 26 | 36 | 28 |
| 中小企業 | 14 | 14 | 4 |
中小企業は14のまま横ばいで、3か月後は4へ下がる見込みです。先行きの下げ幅は10ポイントで、3つの規模の中でいちばん大きくなっています。一方で、雇用人員判断には広島県分の規模別の表がないため、「規模の小さい会社ほど人が足りない」とはこの資料からは言えません。
この数字を自社に置き換えると
ここまでを3行にまとめます。広島県の会社は、1年を通じて人が足りないと答えていて、3か月後はさらに深まる見込み。製造業では、上がった仕入れに売値が追いつかない差が26ポイントに開いた。中小企業の業況は、3か月後に下がる見込み。
人が足りないまま、値上げのご案内、見積の出し直し、取引先からの問い合わせへの返信、仕入れ値と売値の集計といった仕事がふえると、その多くは経営者や古くからいる担当者のところに集まります。どれも決まった形があり、毎回ゼロから書かなくてよい事務です。
そこで決めておきたいのが、人をふやす前に、決まった形の事務を人から外しておくことです。案内文や見積の下書きはAIに書かせて人が確かめる、取引先からの問い合わせへの返信は下書きまで任せる、仕入れ値と売値の数字は表にまとめさせる、の3つに分けられます。渡したぶんの時間は経営者に戻り、書き方の型は会社に残ります。
念のため申し添えますと、AIを入れれば人手不足や値上げの悩みが片づく、という話ではありません。価格をいくらにするか、取引先とどう話し合うかは、それぞれの会社が判断することです。ここで扱っているのは、そのまわりにある事務の部分だけです。
出典
※本記事は2026年9月15日時点の公表情報にもとづいています。数字はすべて日本銀行広島支店の2026年6月調査(2026年7月1日公表)によります。「最近」は回答時点、「先行き」は3か月後の見込みです。表の「26年6月」は「最近」の値です。仕入価格と販売価格の差は、公表されたD.I.から弊社で計算しました。2026年3月調査で調査対象企業の見直しが行われているため、それより前の回との比較は目安としてご覧ください。次回の9月調査の結果は、公表されしだい日本銀行広島支店のページに掲載されます。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
人が足りない状態が続くなかで、値上げのご案内や見積の出し直しがふえるなら、手をつける順番は、決まった形の案内文や見積の下書きを任せる、取引先からの問い合わせへの返信を任せる、仕入れ値と売値の数字をまとめさせる、の3つです。
ご相談について
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