コラム
竹原市の市民所得は県平均の88%|13年連続で下回る、生産額1.4倍の中身
竹原市に住む人1人あたりの所得は年2,917千円です。広島県平均の3,314千円に対して88.0%。県内23市町のなかで14番目にあたります。広島県が公表した令和5年度の市町民経済計算の数字です。
いっぽうで、竹原市で働く人1人が生み出した額は年12,177千円。県平均8,547千円の142.5%で、23市町のなかで3番目に高い水準でした。生む額は県内上位、住む人の所得は県平均以下。この2つが同じ市で同時に起きています。ただし前者には、あとで見るとおり大きな注釈が要ります。
人が減っても仕事は減らない地域で、事務をAIへ渡す選択肢を記事の最後にまとめています →
竹原市の市民1人あたりの所得はいくらか
市町民経済計算では、住んでいる人の所得を「市町民分配所得」と呼びます。令和5年度の竹原市は総額65,700百万円、人口22,526人で割ると1人あたり2,917千円です。
市町ごとのこの集計とは別に、広島県全体の数字は県民経済計算という統計にまとめられています。令和5年度の県全体は、経済成長率が名目で0.9%のプラス、実質で2.0%のマイナスでした。作り方が違うので市町の数字とそのまま足し引きはできませんが、県全体の動きは広島県の経済成長率の記事に整理しています。
| 指標(令和5年度) | 竹原市 | 広島県計 | 県計=100 |
|---|---|---|---|
| 人口1人あたり市町民分配所得 | 2,917千円 | 3,314千円 | 88.0 |
| 人口1人あたり市町民家計可処分所得 | 2,580千円 | 2,757千円 | 93.6 |
| 人口1人あたり市町内総生産 | 5,788千円 | 4,602千円 | 125.8 |
| 就業者1人あたり市町内総生産 | 12,177千円 | 8,547千円 | 142.5 |
「県計=100」は広島県の値を100とした地域差指数で、県が公表している数値をそのまま載せています。
この88.0という数字は、令和5年度だけの話ではありません。公表されている平成23年度から令和5年度までの13年分を並べると、竹原市の指数は13年すべてで100を下回っています。範囲は82.2から88.0。むしろ令和5年度の88.0は、この13年で最も高い値です。
| 年度 | 人口1人あたり分配所得の指数 | 就業者1人あたり総生産の指数 |
|---|---|---|
| 平成23年度 | 85.2 | 108.8 |
| 平成26年度 | 82.9 | 90.0 |
| 平成29年度 | 84.8 | 102.1 |
| 令和2年度 | 84.0 | 101.5 |
| 令和4年度 | 82.2 | 94.3 |
| 令和5年度 | 88.0 | 142.5 |
左の列はどの年も100に届きません。いっぽう右の列は年によって89.3から142.5まで振れています。この振れ方に、次の話の答えがあります。
「1人あたりが生む額が県平均の1.4倍」は何だったのか
結論を先に書きます。この142.5%は、竹原市の事業所が急に稼ぐようになった結果ではありません。電気・ガス・水道・廃棄物処理業という1つの産業の数字が動いたためです。
竹原市の市町内総生産は、令和4年度の87,174百万円から令和5年度の130,371百万円へ、43,197百万円ふえました。産業別に見ると内訳はこうなります。
| 産業 | 令和4年度 | 令和5年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 電気・ガス・水道・廃棄物処理業 | 1,038百万円 | 36,026百万円 | +34,988百万円 |
| 製造業 | 23,507百万円 | 27,235百万円 | +3,728百万円 |
| 建設業 | 6,451百万円 | 8,202百万円 | +1,751百万円 |
| 卸売・小売業 | 12,278百万円 | 13,194百万円 | +916百万円 |
| 保健衛生・社会事業 | 11,060百万円 | 11,035百万円 | -25百万円 |
| 不動産業 | 8,370百万円 | 8,334百万円 | -36百万円 |
| 総生産 | 87,174百万円 | 130,371百万円 | +43,197百万円 |
増加分43,197百万円のうち、34,988百万円が電気・ガス・水道・廃棄物処理業ぶんです。増えた額の81.0%がこの1業種にあたります。
この産業の数字は、竹原市では以前から年ごとに大きく動いてきました。平成27年度は33,475百万円、令和元年度は7,561百万円、令和4年度は1,038百万円、令和5年度は36,026百万円。13年のあいだに何度も上下しています。
市町内総生産は「その市町のなかで生み出された額」を計るもので、そこで働く人や住む人の所得とは別の指標です。竹原市のように大きな設備をもつ事業所がある地域では、その1か所の数字で市全体の指標が動きます。「1人あたりの生産額が県内3位」を、市内の会社の稼ぐ力がそのまま強いという意味に読むと外れます。
現に、電気・ガス・水道・廃棄物処理業が1,038百万円だった令和4年度は、就業者1人あたり市町内総生産の指数が94.3で、県平均を下回っていました。
賃金が安いから所得が低いのか
ここは意外な結果でした。竹原市で働く人の1人あたりの給与水準は、県平均とほとんど変わりません。
市町民分配所得の内訳のうち、雇用者報酬を雇用者数で割ると次のようになります。
| 項目(令和5年度) | 竹原市 | 広島県計 | 竹原/県 |
|---|---|---|---|
| 雇用者報酬 | 47,043百万円 | 6,832,876百万円 | — |
| 市町民雇用者数 | 9,343人 | 1,334,417人 | — |
| 雇用者1人あたり雇用者報酬 | 5,035千円 | 5,121千円 | 98.3% |
年5,035千円と5,121千円。差は86千円で、県平均の98.3%です。住民1人あたりで見たときの88.0%とは、ずいぶん開きがあります。給与の水準そのものが県より1割低いわけではない、ということになります。
では何が所得の差をつくっているのか
差をつくっているのは人口に対して給与を受け取っている人が何割いるかです。
| 項目(令和5年度) | 竹原市 | 広島県計 |
|---|---|---|
| 人口 | 22,526人 | 2,739,446人 |
| 市町民雇用者数 | 9,343人 | 1,334,417人 |
| 雇用者が人口に占める割合 | 41.5% | 48.7% |
| 市町内就業者数 | 10,706人 | 1,475,169人 |
| 就業者が人口に占める割合 | 47.5% | 53.8% |
竹原市では人口の41.5%が雇用者です。県全体は48.7%。1人あたりの給与がほぼ同じでも、受け取っている人の割合が7.2ポイント低ければ、人口で割った所得はその分だけ下がります。
分配所得の中身を構成比で見ると、竹原市は雇用者報酬が71.6%(県計75.3%)、企業所得が23.2%(県計19.1%)です。給与として配られる割合が県よりやや低く、事業を営む側の所得の割合がやや高い形になっています。
13年で人口と働き手はどう減ったか
同じ資料で平成23年度と比べます。
| 項目 | 平成23年度 | 令和5年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 人口 | 28,186人 | 22,526人 | -5,660人(-20.1%) |
| 市町内就業者数 | 12,154人 | 10,706人 | -1,448人(-11.9%) |
| 市町民雇用者数 | 10,764人 | 9,343人 | -1,421人(-13.2%) |
人口は5,660人減り、2割が失われました。就業者の減り方は11.9%で、人口ほどではありません。人口が減る速さのほうが働き手が減る速さより大きいため、人口に占める就業者の割合は43.1%から47.5%へ上がっています。
言いかえると、まちの人数は2割減ったのに、働いている人はその割には減っていないという形です。仕事の量が人数と同じ比率で減るわけではないので、残っている1人が受け持つ範囲は広がる方向に動きます。
この数字は経営者にとって何を意味するか
3つに整理します。
| 読み取れること | 数字 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 給与水準で不利なわけではない | 雇用者1人あたり報酬は県の98.3% | 「竹原だから安く雇える」も「安いから人が来ない」も、この数字からは言えない |
| 人を採って解く道は細い | 就業者は13年で1,448人減 | 母数そのものが縮んでいる。募集の巧拙より前に、頭数の前提が変わっている |
| 1人あたりの守備範囲は広がる | 人口-20.1%に対し就業者-11.9% | 同じ人数で以前より広い範囲を見る形になりやすい |
採用で埋める前提が細くなっているとき、先に動かせるのは仕事の配り方のほうです。判断が要る仕事は人が持ち続けます。毎回だいたい同じ形で終わる作業は、任せ方を変えられる側にあります。
弊社がこれまでに支援した7社(眼鏡店・歯科・内科・スクール・住宅リフォーム)のなかで実測できているのは、メール返信が1時間から15分になった例です。1日1時間かかっていた作業が15分になると、1日あたり45分が戻ります。
- メールの返信(朝、下書きが揃っている状態に)
- 見積書・請求書(数字を入れるだけの形に)
- 議事録(録音を渡すと、議事録と宿題リストに)
- 日報・記録(話すだけで貯まる形に)
- 夜間・休日の一次対応(公式LINEでの自動応答)
竹原市の事業所は1,193件で、そのうち752件が従業者4人以下です。事務の仕事量が1人分に届かないまま経営者が抱えている形になりやすい規模で、この構造は竹原市の事業所1,193件のうち752件が4人以下にまとめました。募集をかけたときに事務と現場で倍率が真逆になる点は広島県の有効求人倍率1.33倍、事務職は0.40倍で扱っています。
まとめ
- 竹原市の人口1人あたり市町民分配所得は2,917千円。県平均3,314千円の88.0%で、県内23市町中14番目(令和5年度)
- この指数は公表されている13年すべてで100を下回る。範囲は82.2から88.0で、令和5年度の88.0は13年で最も高い値
- 就業者1人あたり市町内総生産は12,177千円で県平均の142.5%、県内3位。ただし増加分43,197百万円の81.0%は電気・ガス・水道・廃棄物処理業ぶん
- この産業は竹原市では年ごとの振れが大きい。令和4年度1,038百万円、令和5年度36,026百万円。令和4年度時点では就業者1人あたりの指数は94.3で県平均以下だった
- 雇用者1人あたりの雇用者報酬は5,035千円で県平均5,121千円の98.3%。給与水準そのものは県とほぼ同じ
- 差は雇用者が人口に占める割合。竹原41.5%に対して県48.7%
- 13年で人口-20.1%、就業者-11.9%。人口の減り方のほうが速く、1人が受け持つ範囲は広がる方向にある
- 採用で埋める前提が細くなっている以上、毎回同じ形で終わる作業から任せ方を決める
出典
- 広島県「市町民経済計算」(令和5年度広島県市町民経済計算結果の掲載ページ)
- 広島県「令和5年度広島県市町民経済計算結果について」(結果概要。令和8年3月31日・統計課)
- 広島県「市町民経済計算 主要指標」(平成23年度から令和5年度。実額と地域差指数)
- 広島県「市町民経済計算 市町内総生産」(産業別の市町内総生産)
- 広島県「市町民経済計算 市町民分配所得」(雇用者報酬・財産所得・企業所得の内訳)
※本記事は2026年8月30日時点の公表情報にもとづいています。地域差指数と実額は広島県の公表値です。雇用者1人あたり雇用者報酬、雇用者・就業者が人口に占める割合、産業別増減の寄与率、13年間の増減率、分配所得の構成比は、公表値をもとに弊社で計算した参考値です。市町内総生産は市町の区域内で生み出された額、市町民分配所得はその市町に住む人が受け取った所得で、集計の範囲が異なります。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
働き手が13年で1,448人減り、それでも仕事の量は同じ比率では減りません。1人が受け持つ範囲が広がるとき、先に軽くできるのは毎回だいたい同じ形で終わる作業のほうです。この記事の内容と地続きなのは次の仕事です。
任せられる仕事の全体は支援内容の一覧に、任せたときにひと月で戻る時間の試算(約28時間)はトップページにまとめています。
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