コラム
広島県の経済成長率(令和5年度)|名目は0.9%のプラス、実質は2.0%のマイナス。物価を差し引くと向きが変わる
広島県の令和5年度(2023年度)の経済成長率は、名目で0.9%のプラス、実質で2.0%のマイナスでした。同じ1年の数字が、名目ではプラス、実質ではマイナスになっています。名目は3年連続のプラス、実質は3年ぶりのマイナスです。
向きが逆になるのは、物価が上がった分を差し引くかどうかの違いです。名目はその年の値段のままの金額、実質は物価の変動を取り除いた金額を指します。広島県総務局統計課が2026年3月31日に公表した県民経済計算から、県内総生産・県民所得・産業別の動きを読んでいきます。
自社でも「売上は増えたのに、手元の感じは去年より厳しい」が同時に起きているのに、金額と単価を分けた表をつくる手が足りないなら、その集計と読み解きを人に張りつけたままにしない方法を記事の最後にまとめています →
広島県の経済成長率はいくつだったか
令和5年度の広島県は、名目県内総生産が12兆6,081億円、実質県内総生産が11兆9,735億円でした。経済成長率は名目0.9%、実質は2.0%の低下です。県民所得の総額は9兆794億円、1人当たり県民所得は3,316千円でした。
| 項目(令和5年度) | 金額・水準 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 名目県内総生産 | 12兆6,081億円 | 0.9% |
| 実質県内総生産 | 11兆9,735億円 | ▲2.0% |
| 県民所得(総額) | 9兆794億円 | 1.5% |
| 1人当たり県民所得 | 3,316千円 | 2.3% |
| 雇用者1人当たり雇用者報酬 | 5,120千円 | 0.4% |
| 就業者1人当たり県内総生産 | 8,547千円 | 0.7% |
県民経済計算は、県内でその年に生み出された金額を、国のGDPと同じ考え方で県の単位に置き直したものです。年度の数字で、公表は令和8年3月31日。令和5年度の実績が2年半あとに出る、という間隔の統計です。
なぜ名目と実質で向きが逆になるのか
実質は、名目からその年の物価の水準を割り戻して求めます。割り戻すのに使う数字がデフレーターで、広島県では令和4年度の102.3から令和5年度は105.3へ、2.9%上がりました(平成27年=100)。
- 名目=12兆5,000億円から12兆6,081億円へ。金額としては0.9%増えた
- 実質=12兆2,160億円から11兆9,735億円へ。物価の分を除くと2.0%減った
- 差=この0.9%と2.0%のひらきが、ほぼそのままデフレーターの2.9%にあたる
実際に、名目の12兆6,081億円をデフレーター105.3で割り戻すと11兆9,735億円になり、公表されている実質の金額とそのまま一致します。名目と実質のあいだにあるのは、この物価の分だけです。
読み方としては、名目は「動いた金額」、実質は「動いた量」にあたります。値段が上がったぶん金額は増えるので、名目だけを見ていると、扱った量が減っていても増えたように見えます。令和5年度の広島県は、この形になっていました。
| 年度 | 名目県内総生産 | 実質県内総生産 | デフレーター | 名目成長率 | 実質成長率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 12兆740億円 | 12兆700億円 | 100.0 | ▲2.1% | ▲2.4% |
| 令和2年度 | 11兆6,700億円 | 11兆5,760億円 | 100.8 | ▲3.3% | ▲4.1% |
| 令和3年度 | 12兆1,790億円 | 12兆710億円 | 100.9 | 4.4% | 4.3% |
| 令和4年度 | 12兆5,000億円 | 12兆2,160億円 | 102.3 | 2.6% | 1.2% |
| 令和5年度 | 12兆6,081億円 | 11兆9,735億円 | 105.3 | 0.9% | ▲2.0% |
成長率の欄は、公表されている総生産の金額から計算したものです。令和3年度までは名目と実質がほぼ同じ向き・同じ幅で動いていました。デフレーターが100前後で止まっていたあいだは、名目と実質の差が出なかったためです。令和4年度に102.3、令和5年度に105.3と上がったことで、両者のひらきが1.4ポイント、2.9ポイントと広がりました。
県民所得は総額と1人当たりでどう違うか
県民所得の総額は9兆794億円で前年度比1.5%の増加、1人当たり県民所得は3,316千円で2.3%の増加でした。1人当たりの伸びのほうが、総額の伸びより大きくなっています。
理由は人口です。広島県の人口は令和4年度の2,759,500人から令和5年度は2,737,848人へ、0.8%減りました。同じ総額を、前の年より少ない人数で割るので、1人当たりは総額より大きく伸びます。総額と1人当たりでは、割る相手の人数が動いているぶん、数字の伸び方が変わるということです。
県民所得の中身は3つに分かれます。前年度からの動きは次のとおりです。
| 県民所得の内訳 | 令和4年度 | 令和5年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 雇用者報酬 | 6兆7,780億円 | 6兆8,330億円 | 0.8% |
| 財産所得 | 5,080億円 | 5,100億円 | 0.4% |
| 企業所得 | 1兆6,570億円 | 1兆7,370億円 | 4.8% |
| 県民所得(合計) | 8兆9,420億円 | 9兆794億円 | 1.5% |
3つともプラスで、伸び幅がいちばん大きいのは企業所得の4.8%です。金額としていちばん大きいのは雇用者報酬の6兆8,330億円で、県民所得の75.3%を占めます。雇用者1人当たりで見ると5,120千円、前の年の5,099千円から0.4%の増加でした。
どの産業が動いたか
県の資料は、実質の成長率について「生産面では、電気・ガス・水道・廃棄物処理業のプラス寄与が大きく、製造業のマイナス寄与が大きかった」と書いています。名目の金額でも、産業ごとに向きが分かれました。
| 県内総生産(生産側・名目) | 令和4年度 | 令和5年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 第1次産業 | 720億円 | 800億円 | 11.1% |
| 第2次産業 | 3兆9,810億円 | 3兆7,810億円 | ▲5.0% |
| うち製造業 | 3兆2,860億円 | 3兆1,220億円 | ▲5.0% |
| 第3次産業 | 8兆3,570億円 | 8兆6,780億円 | 3.8% |
製造業が1,640億円減り、第3次産業が3,210億円増えた形です。構成比で見ると、製造業の占める割合は26.3%から24.8%へ下がり、第3次産業は66.9%から68.8%へ上がりました。広島県の県内総生産は、製造業の比重が下がった年だったということになります。
ただし、どの産業がなぜそう動いたのかまでは、この資料には書かれていません。金額の増減が分かるところまでが、県民経済計算から読める範囲です。
全国とくらべるとどうか
1人当たり県民所得3,316千円に対して、内閣府が公表した令和5年度の1人当たり国民所得は3,521千円でした。資料では、この2つの比を0.9倍としています。平成23年度から令和4年度までは1.0倍で並んでいたので、令和5年度に初めて1.0倍を割った形です。
ただし県の資料には、「県民所得」と「国民所得」には概念上の差異が生じるため、両者を単純に比較することはできないという注記が付いています。平成27年基準改定で、中央政府にかかわる一部の推計値がどの地域にも属さない扱いになったためです。表の上では並んで見えても、そのまま引き算してよい数字ではありません。
県内総生産の全国に対する比率は、令和4年度の2.2%から令和5年度は2.1%になりました。
自社の数字に置き換えると
この統計の読み方は、そのまま自社の数字にあてはまります。県の数字で起きていたことは、次の2つでした。
- 値段が上がった分を差し引くと向きが変わる=売上の金額が増えていても、仕入や単価の上がり方のほうが大きければ、扱った量としては減っている
- 割る人数が動くと伸び方が変わる=会社全体の数字と、1人当たりの数字は、人が増えたか減ったかで別々に動く
どちらも、金額だけを並べた表では見えません。売上の隣に単価か数量の列を置き、総額の隣に1人当たりの列を置く。それだけで、同じ数字から読み取れることが変わります。毎月その形に直す作業に手が取られているなら、そこが渡せる仕事です。
この統計を読むときの注意
- 年度の数字=令和5年度は2023年4月から2024年3月まで。月ごとの動きを見る鉱工業生産指数とは、別の物差しです
- 実質値は連鎖方式=平成27暦年連鎖価格によるもので、基準年から離れるほど単純な足し算が合わなくなります
- 市町ごとの数字は別の統計=竹原市など市町別は市町民経済計算という別の集計で、作り方が違います。竹原市の数字は市民所得の記事にまとめています
- 公表までの間隔=令和5年度の結果が令和8年3月の公表です。足元の景気を知りたいときは、日本銀行広島支店の短観のような別の統計を使います
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
自社の売上でも、金額の増減と単価の上がり分を分けて並べないと、伸びているのか目減りしているのかが分かりません。手をつける順番は、月ごと・商品ごとの売上と単価を1枚の表にまとめさせる、総額と1人当たりの列を両方つくらせる、増減の大きかったところだけを短い文にして毎月見る形にする、の3つです。
売上を1枚の表に直す例は数字の集計と表づくりに、出どころつきで数字を比べる形に整える進め方は調べもののまとめにまとめています。
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