コラム
広島県の鉱工業生産指数(令和8年7月速報)|前月比は6.1%低下、前年同月比は5.3%上昇。くらべる相手で向きが変わる
広島県の令和8年(2026年)7月の鉱工業生産指数(速報)は107.0で、前月比は6.1%の低下、前年同月比は5.3%の上昇でした。同じひと月の数字が、前の月とくらべると下がり、去年の同じ月とくらべると上がっています。
向きが逆になるのは、くらべる相手と、使っている指数が違うためです。前月比は季節の波をならした季節調整済指数、前年同月比はならしていない原指数を使います。広島県総務局統計課が2026年9月に公表した月報から、生産・出荷・在庫の3つと、数字を動かした業種を読んでいきます。
自社の売上や受注でも同じように毎月の数字を並べたいのに、記録を集めて表にする手が足りないなら、その集計と報告の下書きを人に張りつけたままにしない方法を記事の最後にまとめています →
広島県の鉱工業生産指数はいくつだったか
令和8年7月の広島県は、生産107.0・出荷106.3・在庫102.0でした。指数は令和2年(2020年)の平均を100としたものです。100を超えていれば、2020年の平均より多くつくっている・出している、という読み方になります。
| 指数(令和8年7月) | 広島県 | 前月比 | 前年同月比 | 全国 | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 生産 | 107.0 | ▲6.1% | 5.3% | 104.7 | 0.1% | 4.1% |
| 出荷 | 106.3 | ▲4.4% | 6.0% | 103.5 | 2.2% | 4.8% |
| 在庫 | 102.0 | ▲7.9% | 3.9% | 98.1 | 0.5% | ▲2.0% |
3つとも前月比は低下で、いずれも2か月連続です。いっぽう前年同月比は、生産と出荷が12か月連続、在庫が3か月連続の上昇でした。前月比と前年同月比の向きが逆になっているのは、3つの指数すべてに共通しています。
全国の数字と並べると、広島県は前月比の下げ幅が大きく、前年同月比の上げ幅も大きくなっています。同じ月でも、広島県のほうが上下の振れが大きいという形です。在庫だけは全国が前年同月比で2.0%の減少、広島県は3.9%の増加で、向きそのものが違います。
なぜ前月比と前年同月比で向きが逆になるのか
理由は、使っている指数が違うからです。前月比は季節調整済指数、前年同月比は原指数で計算されています。実際の数字で追うと、次のようになります。
- 前月比=季節調整済指数の107.0を、前月(6月)の113.9とくらべて▲6.1%
- 前年同月比=原指数の114.0を、去年の7月の108.3とくらべて5.3%
季節調整済指数は、年末や連休など毎年きまって起きる増減をならしたあとの数字です。となりの月と直接くらべるために使います。原指数はならしていないそのままの数字で、去年の同じ月とくらべます。去年の同じ月も同じ季節の影響を受けているため、くらべれば季節の分は相殺されます。
つまり前月比は「先月からどう動いたか」、前年同月比は「1年前の水準とくらべてどうか」を見る道具で、答えが違っても矛盾ではありません。直近13か月を並べると、この形がはっきり出ます。
| 年月 | 生産指数(季節調整済) | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 令和7年7月 | 101.7 | ▲3.2% | ▲4.6% |
| 8月 | 107.3 | 5.5% | 5.6% |
| 9月 | 104.5 | ▲2.6% | 3.4% |
| 10月 | 106.7 | 2.1% | 4.3% |
| 11月 | 108.4 | 1.6% | 4.1% |
| 12月 | 105.8 | ▲2.4% | 5.9% |
| 令和8年1月 | 111.1 | 5.0% | 5.9% |
| 2月 | 114.4 | 3.0% | 9.4% |
| 3月 | 111.2 | ▲2.8% | 10.9% |
| 4月 | 112.0 | 0.7% | 7.9% |
| 5月 | 120.0 | 7.1% | 0.7% |
| 6月 | 113.9 | ▲5.1% | 10.5% |
| 7月(速報) | 107.0 | ▲6.1% | 5.3% |
令和7年8月からの12か月を数えると、前月比がマイナスだった月は5回ありますが、前年同月比は12か月すべてプラスです。毎月上下しながら、去年より高いところにいる、という並びになっています。
ここで気をつけたいのは、「2か月連続の低下」と「12か月連続の上昇」が、どちらも同じ資料に書かれた本当のことだという点です。片方だけを取り出せば、広島の生産は落ちているとも、伸びているとも書けてしまいます。1か月分だけを見て向きを決めないほうが安全です。
どの業種が数字を動かしたのか
前月比では8業種が上昇、10業種が低下しました。前年同月比では7業種が上昇、11業種が低下しています。寄与の大きかった業種は、くらべる相手によって顔ぶれが変わります。
前の月とくらべて(季節調整済指数)
| 向き | 業種 | 前月比 | 主な品目 |
|---|---|---|---|
| 上昇 | 一般機械工業(総合) | 7.8% | 紙工機械、圧延機械、印刷機械 |
| 上昇 | 電気・情報通信機械工業 | 10.7% | 低圧遮断器、開閉制御装置、電気測定機 |
| 上昇 | 木材・木製品工業 | 4.1% | 製材品 |
| 低下 | 輸送機械工業 | ▲16.0% | 普通自動車、鋼船新造、航空機部品 |
| 低下 | 電子部品・デバイス工業 | ▲17.6% | 大規模集積回路、混成集積回路 |
| 低下 | プラスチック製品工業 | ▲10.7% | 光学フィルム、パイプ |
去年の同じ月とくらべて(原指数)
| 向き | 業種 | 前年同月比 | 主な品目 |
|---|---|---|---|
| 上昇 | 輸送機械工業 | 11.4% | 航空機部品、普通自動車、鉄道車両 |
| 上昇 | 電子部品・デバイス工業 | 21.7% | 大規模集積回路、混成集積回路 |
| 上昇 | 一般機械工業(総合) | 7.2% | 半導体製造装置、圧延機械 |
| 低下 | プラスチック製品工業 | ▲10.1% | 光学フィルム、日用品・雑貨 |
| 低下 | 金属製品工業 | ▲6.6% | 橋りょう、飲料用缶 |
| 低下 | 化学工業 | ▲3.4% | 医薬品、頭髪用化粧品 |
目立つのは輸送機械工業と電子部品・デバイス工業です。前月比では低下した業種の上位に入り、前年同月比では上昇した業種の上位に入っています。同じ業種でも、くらべる相手を変えると向きが逆になります。
両方で低下しているのはプラスチック製品工業です。前月比▲10.7%・前年同月比▲10.1%で、どちらの見方でも下がっています。
主要業種の生産指数(6月→7月)
| 業種 | 6月 | 7月 | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼業 | 91.8 | 96.3 | 4.9% | 3.9% |
| 一般機械工業(総合) | 86.4 | 93.1 | 7.8% | 7.2% |
| 電気機械工業(総合) | 182.4 | 159.0 | ▲12.8% | 22.3% |
| 自動車部門 | 105.2 | 91.9 | ▲12.6% | 10.4% |
| 造船部門 | 120.3 | 90.8 | ▲24.5% | ▲24.3% |
5つのうち前月比と前年同月比がそろってマイナスなのは造船部門だけです。自動車部門と電気機械工業は、前月比では二桁の低下ですが、前年同月比では二桁の上昇になっています。
なぜその業種が動いたのかまでは、資料に書かれていません。ここで言えるのは、上下に効いた品目(普通自動車、鋼船新造、大規模集積回路など)と、その増減の大きさまでです。
中国地方・全国とくらべるとどうか
生産指数を3つ並べると、令和8年7月の前年同月比は中国地方がいちばん大きく、前月比は広島県の下げ幅がいちばん大きくなっています。
| 生産指数(令和8年7月) | 指数 | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 広島県 | 107.0 | ▲6.1% | 5.3% |
| 中国地方 | 106.5 | ▲0.7% | 12.1% |
| 全国 | 104.7 | 0.1% | 4.1% |
水準(指数そのもの)は3つとも100を超えていて大きな差はありません。差が出るのは動き方のほうで、広島県はひと月でとくに大きく下げたという形です。県の生産は輸送機械や電子部品の比重が高く、大きな品目の増減がそのまま全体に出ます。
自社の数字に置き換えると
この読み方は、県の統計だけの話ではありません。自社の売上や受注の数字にも、そのまま使えます。
- 前の月とくらべる=季節の波が乗ったままの比較になる
- 去年の同じ月とくらべる=季節の分は相殺される
- 2つを並べて、はじめて「今月が悪いのか、毎年そういう月なのか」が分かる
ただし2つを並べるには、毎月おなじ形で数字を残しておく必要があります。手が止まるのは読み方ではなく、その並べる手間のほうです。月末に売上を拾い、去年の同じ月を探し、表に直して、要点を短くまとめる。この一連が経営者に張りついたままになりがちです。
ここはAIに渡せる部分です。たとえば次のような作業です。
- 売上や受注の記録を、月ごと・商品ごとに拾って1枚の表にまとめる
- 前月比と前年同月比の両方を付けた形に直す
- 増減の大きかった項目だけを拾って、要点の短い報告文にする
- 会議や金融機関への説明に使う資料のたたき台をつくる
判断そのものはAIには渡せません。渡せるのは、判断の手前にある集計と清書です。ここを渡せると、その分の時間が経営者にしかできない仕事へ戻ります。
念のため申し添えますと、この統計は工業の生産量の動きを示すもので、景気の先行きを示すものではありません。AIを入れれば生産量が増える、という話でもありません。ここで扱っているのは、数字を並べる手間のほうです。
出典
※本記事は2026年9月20日時点の公表情報にもとづいています。数字は広島県総務局統計課「令和2年基準 広島県鉱工業生産・出荷・在庫指数 令和8年7月」の概況・統計表(第1表)および参考資料「広島県・中国地方及び全国の鉱工業指数の動き」によります。令和8年7月分は速報値で、6月以前は確報値です。速報値はのちの確報で改められることがあります。指数は令和2年(2020年)平均を100としたもので、同じ令和2年基準でも毎月勤労統計調査の指数とは別の統計です。指数どうしを足し引きすることはできません。また、企業が景気をどう見ているかを示す日本銀行広島支店の短観や、年に1回の出荷額の水準を示す経済構造実態調査とは、それぞれ別の調査です。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
自社の売上や受注でも前月比と前年同月比を並べたいのに、毎月おなじ形に直す手が足りないなら、手をつける順番は、月ごと・商品ごとの記録を1枚の表にまとめさせる、前月比と前年同月比を付けた形に直させる、増減の大きかった項目だけの短い報告文を下書きさせる、の3つです。
売上の集計を表に直す例は数字の集計と表づくりに、出てきた数字を毎月見ていく進め方はホームページの数字をAIと見るにまとめています。
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