コラム
広島県の毎月勤労統計調査(令和8年6月速報)|実質賃金は前年比2.4%減、残業時間だけが12.3%ふえた
広島県の令和8年(2026年)6月の毎月勤労統計調査(速報)では、事業所規模5人以上の現金給与総額は465,068円、前年同月比で0.1%の減少でした。減少は7か月ぶりです。いっぽうで所定外労働時間(残業)は11.0時間、前年比12.3%の増加でした。
物価の上がり分を差し引いた実質賃金の指数は、6月が127.9で前年比2.4%の減少です。広島県総務局統計課が2026年8月31日に公表した資料から、賃金と労働時間の中身を読んでいきます。
残業がふえているかどうかを毎月たしかめたいのに、勤怠の数字を集めて表にする手が足りないなら、その集計と連絡の下書きを人に張りつけたままにしない方法を記事の最後にまとめています →
令和8年6月の広島県の賃金はいくらだったか
調査は、16の大きな産業に属する、常時5人以上の常用労働者を雇っている事業所のうち、厚生労働大臣が指定した約1,000事業所を対象にしています。1人あたりの月平均です。
| 項目(5人以上) | 広島県 | 前年比 | 全国 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 現金給与総額 | 465,068円 | ▲0.1% | 531,677円 | 3.4% |
| きまって支給する給与 | 288,502円 | 3.4% | 299,232円 | 3.4% |
| うち所定内給与 | 266,472円 | 2.6% | 279,189円 | 3.4% |
| うち所定外給与 | 22,030円 | 12.7% | 20,043円 | 2.8% |
| 特別に支払われた給与 | 176,566円 | ▲5.4% | 232,445円 | 3.5% |
現金給与総額だけが減っていますが、毎月決まって支払う給与は3.4%ふえています。差を生んでいるのは、いちばん下の特別に支払われた給与(賞与・期末手当などの一時金)が5.4%減ったことです。6月は賞与が出る月にあたるため、総額の金額そのものが大きく、一時金の増減がそのまま総額の増減に出ます。
なぜ一時金が減ったのかは、資料に書かれていません。ここで言えるのは、6月の総額の減少は、毎月の給与が下がったからではない、という数字の並びまでです。
あわせて、事業所規模30人以上では現金給与総額が547,685円で前年比1.0%の増加(18か月連続の増加)でした。規模を5人以上で見るか30人以上で見るかで、増減の向きが逆になります。小さな事業所を含めた数字を見たいときは、5人以上の系列を使います。
実質賃金はどうなっているか
月報の時系列表には、名目の賃金指数と並べて「実質賃金」の指数が載っています。物価の上がり分を差し引いた形の指数です。令和2年(2020年)の平均を100としています。
| 令和8年(5人以上・現金給与総額) | 名目 指数 | 前年比 | 実質 指数 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 89.7 | 0.9% | 78.1 | ▲0.9% |
| 2月 | 90.5 | 3.4% | 79.5 | 1.8% |
| 3月 | 95.8 | 0.5% | 83.8 | ▲1.2% |
| 4月 | 94.9 | 1.6% | 82.5 | 0.0% |
| 5月 | 93.9 | 0.4% | 81.2 | ▲1.5% |
| 6月 | 148.0 | ▲0.1% | 127.9 | ▲2.4% |
名目がプラスの月でも、実質はマイナスに沈む月があります。6か月のうち4か月で実質はマイナスでした。なお、毎月決まって支払う給与のほうで見ると、6月の実質は前年比1.1%の増加です。総額で見るか、毎月の給与で見るかで、ここでも向きが変わります。
実質賃金の算出に使う指数の種類までは月報に書かれていないため、ここでは数字の並びだけを示します。物価の側の動きは広島市の消費者物価指数の記事にまとめています。
残業だけがふえているのか
労働時間の側を見ると、6月の総実労働時間は143.2時間で前年比0.4%の増加でした。内訳は所定内が132.2時間(0.5%の減少)、所定外が11.0時間(12.3%の増加)です。出勤日数は18.5日で、前年と同じでした。
| 令和8年(5人以上・前年比) | 所定内労働時間 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|
| 1月 | ▲1.7% | 9.4% |
| 2月 | ▲1.5% | 8.1% |
| 3月 | 0.6% | 9.7% |
| 4月 | 0.4% | 11.3% |
| 5月 | ▲3.5% | 9.5% |
| 6月 | ▲0.5% | 12.3% |
所定内はほぼ横ばいか減っているのに、所定外だけが毎月8%から12%ふえています。時系列表の前年比を並べると、所定外は令和7年12月から7か月続けてプラスです。
全国と比べると、6月の所定外労働時間は全国が9.7時間で前年比0.0%、広島県は11.0時間で12.3%でした。全国が横ばいの月に、広島県だけが二桁でふえている形です。
人が減ったから残業がふえた、という読み方は、この統計からは出てきません。常用労働者数は1,089,064人で前年比0.9%の増加、うち一般労働者は755,422人で2.1%の増加です(パートタイム労働者は333,642人で1.6%の減少)。人数はふえていて、それでも残業がふえています。理由は資料に書かれていないため、ここでは断定しません。
どの産業で残業が長いか
同じ6月の所定外労働時間を産業別に見ると、次のようになります。
| 産業(5人以上・令和8年6月) | 総実労働時間 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|
| 調査産業計 | 143.2時間 | 11.0時間 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 168.2時間 | 23.1時間 |
| 運輸業、郵便業 | 168.3時間 | 22.9時間 |
| 製造業 | 173.1時間 | 17.4時間 |
| 建設業 | 172.0時間 | 15.8時間 |
| 情報通信業 | 157.4時間 | 13.8時間 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 156.4時間 | 12.0時間 |
| 教育、学習支援業 | 128.8時間 | 10.9時間 |
| 不動産業、物品賃貸業 | 146.6時間 | 10.8時間 |
| 卸売業、小売業 | 133.8時間 | 9.6時間 |
| 金融業、保険業 | 147.6時間 | 8.9時間 |
| サービス業(他に分類されない) | 140.7時間 | 8.8時間 |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 134.5時間 | 8.5時間 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 86.2時間 | 5.6時間 |
| 複合サービス事業 | 145.0時間 | 4.4時間 |
| 医療、福祉 | 131.2時間 | 3.3時間 |
残業が長い側は、電気・ガス、運輸、製造、建設と続きます。製造業の所定外は前年比8.1%の増加で、調査産業計と同じく二桁に近い伸びでした。
宿泊業、飲食サービス業の総実労働時間が86.2時間と短いのは、1日の所定労働時間や週の所定労働日数が短いパートタイム労働者の割合が高い産業だからです。時間が短い=忙しくない、とは読めません。
自社に置き換えると
ここまでの数字を1行にすると、人はふえ、所定内の労働時間は減り、残業だけがふえている、になります。人手を足しても所定外が減っていないなら、足りていないのは人数ではなく、1人あたりが抱えている仕事の量のほうです。
残業の中身のうち、現場に出る時間はAIでは代われません。代われるのは、その前後にくっついている事務のほうです。たとえば次のような作業です。
- 勤怠の記録を人ごと・月ごとに拾って、1枚の表にまとめる
- 来月のシフトや予定表のたたき台を、条件を渡してつくらせる
- 打ち合わせで決まったことを「誰が・いつまでに」の一覧に直す
- 取引先への連絡文や、日程調整のメールの下書きを書かせる
この4つは、どれも持ち帰って夜に片づけられがちな仕事です。ここを渡せると、その分の時間が経営者にしかできない仕事へ戻ります。
念のため申し添えますと、AIを入れれば残業が減る、と言える統計ではありません。残業の理由は事業所ごとに違い、この調査もそこまでは調べていません。ここで扱っているのは、残業のうち事務で埋まっている部分だけです。
出典
※本記事は2026年9月19日時点の公表情報にもとづいています。数字は広島県総務局統計課「毎月勤労統計調査 令和8年6月の動き(概要)」(2026年8月31日公表)、同月報の実数表(第2表)および時系列表(第1表・第5表・第6表)によります。令和8年6月分は速報値で、のちに確報で改められることがあります。指数はいずれも令和2年(2020年)平均を100としたもので、消費者物価指数の2025年基準とは別の物差しです。また、同じ調査の令和7年(2025年)平均(確報)は現金給与総額343,242円で、その内訳は広島県の平均賃金の記事にまとめています。6月は賞与が出る月にあたるため、月次の額は年平均より大きく出ます。次回の月報(令和8年7月速報)は令和8年9月下旬に公表される予定です。
この記事に出てきた仕事、AIに任せると
残業がふえているかどうかを毎月たしかめたいのに、勤怠の記録を人ごとに拾って表にする手が足りないなら、手をつける順番は、ばらばらの勤怠の数字を1枚の表にまとめさせる、来月のシフトや予定表のたたき台をつくらせる、日程調整や連絡の文面を下書きさせる、の3つです。
勤怠の数字を集めて表にする例は数字の集計と表づくりに、シフトや予定表の原案づくりは予定表・シフトのたたき台にまとめています。
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